第六話

 吹き抜けの六階建て、新社会人の身ではこのホテルは高級しすぎて身の丈以上かなと思ってしまったが、秋穂はなに言ってんのこれからバンバン稼ぐんだよ、この程度大丈夫大丈夫と言いながら受付をスタスタとしてしまった。ここは日光でも人気の場所だ。このホテルだけでっも充分満足出来る程の場所でホテル評価も星四だった。それでも一人二万円で、ビッフェ形式で湯葉やゴディバチョコのデザー卜も食べ放題だった。それに屋上の野外露天風呂も良かった。周りに除かれるような高い建物がないからのんびりと疲れる。それに、これは同性の特権なんだけど隣には秋穂がいる。好きな人と一緒に大浴場に入れるなんてすっごく幸せ。隣で秋穂が温泉に浸かっている。空には星が見える。星は想像しているような満点の夜空ではないけど、ここの温泉街の明かりが在るせいなのかもしれない。でも、都会に比べたら全然綺麗だ。

 「良い場所だね、落ち着くし、のんびり出来る」

 「うん、良いよね。また来たいな」

 「来れるじゃん。また来年も来ようよ」

 「いいの?」

 「来れるよ、なんで一回だけしか来れないの。何度だって来れるよ」

 「うん、また来ようね」

 私は秋穂の言葉に嬉しかった。またこの場所に来れる。日光にも東照宮にも、相田は宇都宮で買い物もする。栃木はよく来る場所だ。北関東の一番の観光地で住んでいる街からも近くて良い場所。これから何度もこうして秋穂と思い出をお互いにお婆ちゃんになるまで重ねていくんだ。もう、悲しいこともない。幸せ。

 周囲には誰も居なかった。此処はプールも在る場所。今の時間は夕食の時間。七時に予約しているからまだ時間は在る。貸切状態の屋上露天風呂に二人っきり。

 私は秋穂にキスをした。

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