バディ
緊張している。何故なら、愛坂狂次さんと組むことになったから。
「今回は、よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
私と彼は、共に反グレ団体を殺すことになっている。
ターゲットのいる建物に侵入し、拳銃を構えた。
愛坂さんが、見張りを撃つ。まずは、ひとり。
それから、銃声を聴いて出て来た奴らを、ふたりで撃ち続ける。
向こうの反撃を死体で防ぎながら、私たちは進んだ。
目指しているのは、奥の部屋にいる団体の長。
長を仕留めるのは、愛坂さんの役目だ。私は、彼の背中を守る。
部屋に加勢に来る奴らを、私は入り口付近で撃ち続けた。
愛坂さんは、物陰に隠れながら撃ち合いをしているようだ。
「クソっ!」と、ターゲットの怒声が響く。弾切れだろう。
愛坂さんは、マガジンを入れ替え、ターゲットの頭と胸部を撃った。
「終わりました。あとは、残りを片付けましょう」
「はい」
ふたりで残党を始末し、任務完了の連絡をする。
ほどなくして、工作屋が到着した。反グレ同士の抗争ということにするらしい。
私たちは、帰宅していいことになった。
「愛坂さん、この後、予定あります?」
「いえ」
「じゃあ、飲みに行きません?」
「すいません。酒は飲まないことにしていますので」
「そうなんですね。では、ファミレスでも」
「はい」
時刻は、20時。私たちは、ファミレスに向かった。
店に入り、愛坂さんと向かい合って座る。
注文を済ませた後。
「私、実は、養成所にいた頃から愛坂さんに憧れてたんですよね」
「私に、ですか?」
「はい。養成所では伝説的存在になってますから。全科目成績トップですもんね。凄いことですよ。私は、爆発物の扱いが苦手でしたけど」
「ありがとうございます。養成所にいた頃は、とにかく生きていくために必死でした」
愛坂さんは、腕組みをして、当時を思い出しているようだ。
「苦労されたんですね」
「まあ、そうですね。ですが、新しいことを覚えるのは楽しかったですよ」
銃。ナイフ。近接格闘術。毒物。爆発物。応急手当て。その他色々。どれも、大切なスキルだ。
それら全てが楽しかったなら、それは覚えもよかったんだろう。
「愛坂さんって、怖いものとかあります?」
「……家族を失うこと。それから、この仕事を続けられなくなることですかね」
「なるほど。故障した殺し屋は、悲惨ですからね」
大抵の場合、使い物にならなくなったら始末されるし。
「あなたのご家族は、この仕事については何か言っていますか?」
「両親は、勉強が出来ない私の将来を心配してましたけど、就職出来てよかったねって言ってます」
「それは何よりですね」
憧れの先輩とも組めたし、こうして話も出来た。
殺し屋になってよかった!
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