第8話 損得

 わたしはおおよそ変な体験というのがつきまとう人生を歩んでいた、もう今はないんだけどね。


 はっきりといつからそういうことが起きていたのかは正直わからない。物心がついた頃から人に言われている内に気づいた。

 きっかけなんてものは無い。ありふれた話で。


 わたしが幼稚園児の頃、どうも噛み合わないことが起きていた。仲の良い友だちとは別の子から昨日公園で見かけて話しかけたのに無視された。と言われてわたしは大いに困惑した。その日はちょうどその時間仲の良い友だちと友だちのお家で遊んでいた、そしてそれは覆ることが無い話だから。友だちがそれを証言したこと、そしてその公園がわたしのあまり行かない公園だったことから。他人の空似もしくはその子の勘違いと結論づけられた。

 こういうことが度々起きていた。

 中には教諭が見たという話も出てきたこれがまた、奇妙だったのはお昼寝の時間に園庭で見たというのである。しかしクラスの中を見るとわたしが寝ている、といった内容だった。


 こんなものがしばらく続いた。数年間も。これだけなら当時のわたしが判断したようにドッペルゲンガーや何かでは?と断言できたはずだった。


 小学生になると更に移動範囲や交友関係も広がりもうひとりのわたしも同じ様にそうなのだ。頻繁にやはり目撃されていたらしい。

 この頃にはそれなりの影響が出ていた、体調不良で学校を休んだ日にわたしを見たと担当クラスの無い教師に目撃され、翌日ザボるなんてと怒られた。後から何度も説明したが人の目を疑うのかとケチをつけられた。的なものだ。


 中学生になるとまたも目撃されていたらしい。

 男性と歩くわたしを見たと教師が証言し、わたしはそのようなことをした記憶も事実も無いと言ったがやはり聞き入れてもらえず指導を受けるはめになった。その日わたしは友だちとショッピングをしていた。しかし友だちが嘘の証言をしたと教師はこともあろうか決めつけた。


 わたしがふしだらな人間なのだと罵り親を呼び出された、親もそのような事実が無いと言ったのだが。結局こんなことが何度も続いて根負けした。


 さて、高校生になりちょっとすると突然その話がパタリと聞かなくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る