2 完

 鼓動が速くなる。疑問が疑いへと変わっていく。得体の知れない彼。何か見落としているそんな気がしてならない。

 僕らは、幼なじみだったこともあって。気も合うからよく周りの友人は感心しからかうこともあった。独り暮らしをしても互いに家を行き来するそれぐらい仲がよかった。記憶する限り最近までそうだったはずなのだが、彼も僕も直近の記憶がない最近一緒に過ごした記憶が。

「なあ、最近互いに家で遊んだ記憶あるか」

 少し声が上ずってしまう。

「言われてみれば無いかもしれない、というか最近の記憶がかけている気もするな」

 彼の答えにやはりそうなのかと思う。が、肝心の得体の知れない恐怖が解決してはくれない。

 もしかすると僕らは喧嘩の末に僕は彼を殺したなんてことはないかとあり得ない想像が脳を焼く。じゃあ、彼は一体誰なのか、何なのか。

 怖くなってしまった。

「考えこんでどうしたんだ?」

それは聞く。身体中がものすごい速さで脈うつ気がしてくる、焼けるように暑い、背中が凍るように寒い。

「1度家に戻ろう」

 それだけ言って僕は早足で帰宅の路に着いた。

 脳裏に赤がちらつく、気のせいだ。そう思うのに事実なのではという強迫観念染みたそれが否定できない。得体の知れない恐怖がそうさせる欠けた記憶が思考を奪う。一度疑うと何もかも信じられなくなっていく。

 彼の目がギラギラ光って見える。本当に僕が殺していたとしたら彼は復讐のために知らないふりをしているなんて考え過ぎなんだろうか。

 「なぁ?」とつい聞いてしまいたくなる。もし本当にそうなら。


 

 家に着くなりキャリーから彼を出す、悪いとだけ告げて冷蔵庫の水を空っぽにする勢いで飲みほす。部屋に戻ると彼は先ほど話をした場所に居た。

「君は少し考え過ぎている」

 胸に言葉が突き刺さる。

「何のこと」

「君はきっと強い思い込みに駆られている」

「そんなことないよ」

 きっと僕はみっともない表情をしているに違いない。

「君はいつだってそういうところがある、たぶんこう思ったんじゃないか? 君が俺を殺してしまったなんて」

 突かれたくない部分が抉られた。酷いやつだと思われても仕方ないこと。何故そんなことまで彼はやすやすとわかるんだろう。

「否定できないなぁ⋯⋯」

「しかしながらそれは思い込みでしかない、もしそうならとっくに電話が来るなり警察が来るなりしているはずだ、そんなことは君がよくわかってるだろ」

 そうだ。なのに思い込みに駆られるあまりまともなことを見落としてしまった。

「結局何も解決できてない」

「猫になってしまったが俺のことは俺が解決するから」だから気にするな彼はそう言った。

「親友を放っておけるものか」

 彼はくるっと背を向ける。何処かへ行ってしまうそんなきがして止めたくなった。

「便宜上ペットという形になるがきみはここに居てくれないか、解決するまで」

「君がいいのなら」

 こうして終わりの見えない奇妙な関係というか生活が始まった。

 

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