夏休みあけ僕は複雑な面持ちで車に揺られている。理由は中学生3年のこのタイミングで転校させられるはめになってしまってたからだ。仲良しだった同級生達と進学について話し合っていたのにそれを親の都合で引き裂かれた。ただでさえ転校というのも中3という多感な時期もこんな風にされることへ苛立つなというのは無理な話ではないか。

 車窓がどんどん田舎らしい景色へと移り変わる、こんなとこに無理やり連れて来られたそう思うとさらに腹がたった。


 田舎といっても特別ド田舎というわけではないが前ほど裕福な(?)生活圏ではないだろうことは僕にもわかる。頬杖をつきながら窓の外の光景が移り変わっていくのを眺めていた。

 ここからはもう引き返せないそんな感覚が僕をこうも苛立たせていた。もちろん携帯があるのだ、連絡くらいはできる。だからといって帳消しにできるものではない。最初のうちは車の中で前を蹴って腹いせしていたがもう無意味なのだと途中からは抵抗をやめた。


 行く場所がゲーセンも映画館もショッピングセンターもコンビニも近くに無かったら最悪だ。行ってみなければわからないけど、ドラマとかじゃそんなイメージが僕にはあった。そしていじめだとか陰湿なものが広がっているそういうイメージ。出る杭は打たれるそんな感じだ。噂話が勝手に町中を一瞬で⋯⋯とか。


 今さらこんなことに腹がたっているのは子どもっぽいか、と思う。けども、心は簡単なものではない。

 残りの学校生活をうまくやっていけることを祈るばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る