全ては糧となる
志季悠一
プロローグ
俺、一志は妄想をするのが好きだ。
異世界に自分が行ったら、もしテロリストが学校を襲撃してきたら。
様々な方面から自分が如何にして活躍するかを考えるのが趣味。
特に、好きな人を助け出すシチュエーションには余念がない。
今は高校二年生が始めったばかり。クラス替えの衝撃、後輩が入ってくるというイベント、それらがようやっと落ち着きを見せていた。新しい環境とは裏腹に、結局俺は昔から仲良くしている、社や、幼馴染の
伊織と同じクラスになれたので二人とばかり話しているが。
去年は話さなかった人と友達になるチャンスがある中で、俺は積極的に話すことはしなかった。
それは、家庭の事情が大きく絡んでいる。
両親は遠いところにいて、あまり金銭面で頼れない。
だから、俺は多くの時間を、バイトに勤しんでいるのだ。
頻繁に遊ぶことは出来ないし、日中はバイトの疲れから活動的には動けない。
それは、部活に入らない理由と、友達を多く持たない理由、両方に直結していた。
そんな状態だから当然彼女もいない。
幼馴染の伊織は社と共に俺の事情を知っている数少ない友人。
かなり外見も可愛い。長い黒髪に、白い肌。大きな瞳に、親しみやすい性格。うちの学校は男女ともに制服が黒一色で灰色のネクタイにリボンで、可愛くない、カッコよくないと文句を言う生徒が多いが、そん
な地味な制服でも華やかに見える魅力が彼女にはある。
俺以外にも、多くの男子生徒が行為を寄せている。
だけど、幼馴染というポジションがありながら、俺は踏み込めていない。
現状が壊れ、数少ない心地よい人間関係を失うのが怖いからだ。
頑張れ、といつも社は言ってくるが、俺は勇気が持てない。
だからこそ、妄想の世界に浸る。
伊織と結ばれ、伊織に愛される自分だけの世界に籠る。
俺は、そんな妄想が現実になればいいのにといつも願っている。
ありえないとは、理解しながら。
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