第12話 ※校舎トイレの怪談⑤

「こ……恋バナ……?恋バナって、あの?」


『そう!恋愛のお話。いやー、私ってさあ、何100年も前からいろんな学校のトイレでいろんな学生の話聞いてるんだけどさー。どの子も恋バナってのをしてる時が一番楽しそうな訳。でも私ってそういうの出来る相手いないじゃん?一度でいいからやってみたかったって訳よ。さ、話聞かせてよ!あの男のこと好きなんでしょ?』


 女の子の言葉を聞いて、私は顔がカーッと赤くなった。


「どうして私が立花くんのこと好きだって知ってるの?」


『だって私この学校にずっといるもん。ここの生徒の事なら大体知ってるよ。それにあの男は警戒してたからねー。特にあの男に関する情報は注意して集めてたんだ。』


 女の子の言葉を聞いて私は再確認した。

 やっぱり立花くんには何か私たちには話せない秘密があるんだと。


『さ、私の事はいいから恋バナしよ。まずはねー、なんで好きになったのかから。』


「え!?そんなの私にもわからないよぉ…」


 この前みたいに怖くはないけど、なんだか恥ずかしい。

 好きになった理由なんて私にもわからない。だって気付いたら立花くんの事が好きだったから。


 昔の事を思い返しながら恥ずかしがってると、そんな私を見兼ねたのか今まで黙っていた深月ちゃんがとうとう口を開いた。


「美玖が立花くんを好きになったのは中学の時よ。なんでもプリント運ぶの手伝ってくれたり、傘貸してくれたりしたのが嬉しかったんだって。」


『へえ〜。ねえ、その話もっと詳しく聞かせてよ。』


「いいわよ。私、美玖の事ならなんでも知ってるから。」


「ちょっと!深月ちゃん!」


(は…恥ずかしいよぉ)


 私の静止の声なんて聞こえていないかの様に深月ちゃんとトイレから出て来た女の子は2人で恋バナをしている。

 しかも内容は私と立花くんについて。

 恥ずかしくて死んじゃいそうだ。


 私の事なんて他所に、2人の恋バナはどんどん盛り上がっていった。



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 あれから何分経ったんだろう。

 ようやく2人の話に区切りが着いたみたいで女の子は満足気な顔をしている。


『いや〜、ありがとね。楽しかったよ!じゃ、約束通りあの男は返すね。まあ、私が何もしなくても勝手に出て来ると思うけど。』


(え!?だったらなんで私はこんな恥ずかしい目に合ったの?)


 納得いかない…とも思ったけどまあ立花くんが戻って来るんだからあまり考え過ぎない事にした。


『それにしても2人とも気をつけた方がいいよ。最近変な幽霊が多いからね。みんなが私みたいに人を襲わないとは限らないから。ま、なんかあったら私の名前を呼んでよ。私たちもう友達でしょ。』


「うん、ありがとう。でも貴女の名前はなんて言うの?」


『そっか。まだ名前言ってなかったね。私は花子。じゃあまたね、美玖、深月。』



(あ、私たちの名前…)


 名前を知っている事に一瞬驚いたけど、そう言えばこの学校中の話を聞いてると言っていたのを思い出した。


「ねえ、美玖。花子ってもしかして…」


「やっぱり深月ちゃんもそう思う?」


 トイレの花子さん。

 おかっぱ頭の小さな女の子ってイメージだったけど随分違ったなぁ。


 そんな事を考えている間に、花子ちゃんは手を振りながら何処かに消えてしまった。

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