第4話 ※トンネルの怪談①
私——
その生徒の名前は立花秋連。
授業態度はいいし、提出物も完璧、困っていると助けてくれる。
これだけだと完璧なんだけど、彼には決定的な弱点?があった。
それは必ずと言っていいほど遅刻して来る事だ。
ヤンキーならまだ分かる。
親に対してか教師に対してか、何かは分からないけど反抗心だけで学校をサボったり遅刻したりする生き物だから。
でも立花くんは違う。
少なくとも、中学が一緒だった私には彼がそういった人だとは思えない。
「——という事で
「はあ?なんで私が?
「ですよねー」
親友の
まあ、ダメ元だったからショックは少ない。
「てか立花くんのどこが良い訳?はっきり言って、良さが全く分からないんだけど。」
「なっ!いっぱいあるよ!私がプリント重くて落としそうな時手伝ってくれたし、傘忘れてた時は貸してくれたし、他にも——」
「あー、もういい。わかった、わかったから。あんたが中学から立花くんのことが好きだってのは。」
(むぅ。まだ沢山あったのに)
言い足りない感は否めないけど、もはや深月ちゃんに話を聞くつもりは無さそうだからこの辺りで終わりにする。
そう、深月ちゃんの言う通り私——田所美玖は立花秋連に恋をしている。
それ故に気になって仕方ないのだ。
彼が高校に入ってから遅刻ばかりしている事が。
「中学の時は毎朝ちゃんと来てたのになぁ。」
「まあ…あれじゃない。思春期ってやつ?ほら、男って厨二病ってのになるんでしょ。たぶん遅刻して来るのがかっこいい年頃なのよ。そっとしてあげな。」
「そんなんじゃない!」と叫びたかったけどそうとは言い切れない自分もいる。
だって私はそこまで深く立花くんの事を知らないから。
「そんな事よりさ。美玖、ダッシュばばあの噂聞いた?」
「ダッシュばばあ?何それ?」
「山の方のトンネルでさ、2時以降に自転車とか自動車が通ると猛ダッシュで追いかけてくるお婆ちゃんが出るんだって。どう?面白そうじゃない?」
(うーん。怖い様な面白い様な…)
真夜中に追いかけられるのは怖いけど、猛ダッシュするお婆ちゃんはちょっと面白いかも。
なんて走るお婆ちゃんを想像してクスッと笑ってしまった。
「あ、笑った。今面白そうって思ったでしょ。よし、じゃあ今夜行ってみようよ。」
「え?行くってまさか……」
「うん。ダッシュばばあが出るって噂の
こうして流される様な形で私は深月ちゃんと今夜、森丘峠に行くことになった。
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