第2話 病院の怪談①
「立花、お前なぁ……何回も言うが一度病院に行ってみたらどうだ?親御さんが忙しいなら放課後俺が連れてってやるから。な?」
時刻は12:05分。
昼休み突入とほぼ同時に学校に着いた俺は担任の
「い…いやぁ、大丈夫ですよ。特に病気って訳でもないですし。ただの寝坊ですって。」
あははは、と俺の乾いた笑い声が生徒指導室に響いた。
剛力先生は相変わらず真剣な眼差しで俺の目を真っ直ぐに見つめている。
「一年生の半分以上を遅刻。これがただの寝坊だと本当に言えるか?立花には悪いが、俺はそうは思えん。はっきり言おう。俺の予想だと立花は何らかの病気にかかっている。」
剛力豪、2年2組担任、担当教科は保健体育
198cmの巨体に角刈りのゴリマッチョという威圧感のある肉体だが、その外見に反して中身は異常なほどに優しい。
担任になったのは今年からだけど一年の時から気にかけられていて、俺が遅刻して怒られているといつも庇ってくれた。
剛力先生曰く「好きで遅刻する生徒はいない」との事だ。
俺の遅刻も病気のせいだと思い込んでいて、こうして病院に連れて行こうとする。
俺は確かに好きで遅刻してる訳じゃない。
だけど病気という訳でもないんだ。
病院になんて行ってみようものなら仮病だとバレてしまう。
「ははは、ただの低血圧ですよ。」
「それでもだ。とにかく一度病院へ行こう。大丈夫、診察代は俺が持つから。よし、そうと決まれば今から行こう。昼休みに入ったばかりで時間もあるしな。昼飯も奢ってやるぞー!!」
「え…いや、マジで大丈夫ですってば…ねえ、ちょっと!」
(駄目だ。この人、力強過ぎる)
こうして抵抗虚しく、俺は剛力先生に引き摺られる形で車に乗せられた。
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車を走らせること5分程度、俺はとうとう病院に着いてしまった。
(はぁ…あんまり病院には来たくなかったんだよなぁ。色んな意味で)
病院には幽霊が集まりやすい。
生と死の狭間とでも呼べる場所だからだろうか。
理由は詳しく知らないけど、とにかく病院は幽霊が集まりやすい場所だ。
「ほら。行くぞ。」
行きたくないといった雰囲気を全面に出していたけど、怪力の剛力先生の手にかかれば俺の抵抗なんて無意味。
いつの間にか受付まで終わっていて、俺はただ問診の順番を待つだけとなっていた。
(はぁ…どうしよう。本当に病気でもなんでもないんだけどなぁ)
病院の先生も困るだろう。
こんな健康体そのものの人間が来ても。
それに剛力先生もだ。
今まで気にかけてくれていたのも、病気の可能性を信じていたから。
病気でもなんでもないと分かれば先生にとって俺は毎日遅刻して来る迷惑な生徒だ。
「立花さーん。立花秋連さーん。」
色々考えているうちに看護師さんが俺を呼んでいる。
「ほら、呼ばれてるぞ。行って来い。」
「……はい。」
気は乗らないがここまで来たら仕方ない。
こうして先生が気にかけてくれるのもこれで最後か、と意を決して診察室へ歩き出したその時だ。
バッハのメヌエットが流れる。
それは不思議と何かの叫び声の様で、病院中に特大の音量で鳴り響いた。
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