第81話

それからも何度か小物の魔物に出会うトラブルはあったが、タクとタツが難なく退治し、その間ユリをメイに任せておくことができたので二人にとってメイの存在はかなり頼もしいものとなった。

「複数の力が使えるっていうのは偉大だな。特に防御ができるってのは助かる」

 タクがもらすとメイは謙遜した。

「でもメインの力じゃないから強い防御はできないわよ。タツみたいにシールド飛ばすこともできないから、自分の周りだけだし」

「それでもユリのそばにいてくれると思うと、正直助かるんだ、俺たち。今までは俺たちが戦っている間に別の魔物が出てきたらひとたまりもなかったからさ」

「まあね、そういう心配は絶えないわよねぇ。あの子魔物に対しては無防備だから」

「だからその…お前が仲間に入ってくれて、よかったよ」

 タクがそっぽを向いて言うと、メイは真っ赤になった。


 今回は荒野の旅が長引いたため、町に着く前にタウベが戻ってきた。

「よしよし、頑張ったね」

 ユリはへろへろになっているタウベに餌をやり、荷物を確認する。

「あー…こういうところにいるときの食料はありがたいねぇ」

「ほんとだな」

「うわ、チョコレートまで入ってる」

 町にいるときとはありがたみが違う。皆の顔にも笑顔が浮かんだ。

「アリスさん、なんて?」

 手紙を読んで苦笑いしているユリにタクが声をかけた。

「んー?怒られた、特にお風呂のは」

「そうだろうなぁ」

 タクも苦笑いになる。

「あ、でもね、薬草の標本は喜んでくれたみたい」

「そうか、よかったな」

「アリスさんていうの?この荷物を送ってくれているのは」

 メイが口をはさんだ。

「そう。私の親友。特別奨学患者仲間のね」

「そういえば、アリスさんはちょっとメイと似てるなぁ」

 タツがおかしそうに言うと、ユリもうなずく。

「そうね、キャラとしてね…でもアリスの方が怖いわよ、断然」

「…それはユリが心配かけるからだろ?」

「……」

 ユリは聞こえないふりだ。タツとタクは顔を見合わせて笑った。ユリはその夜まだ書き上げていなかった報告書を書き、翌朝タウベに乗せて送った。


 そして数日後、一行はユーピンを出てから実に二週間近くを費やしてシルアの町に到着した。

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