第六章 荒野
第72話
ユーピンまでの草原と森の旅も野宿であるからには決して易しいものではなかったが、それでもやはり初心者向きの旅程だった。ユーピンから先は荒野が多く、水の確保にも苦労するようになった。
そのせいか、馬にも人間にも疲れが目立つようになり、泉を見つける度に休憩を取らなくてはならなかった。
「風が強いね」
砂埃を避けるためにすっぽりと分厚いベールを頭と顔にかぶったユリが言った。
「高い木が少ないからな。この風のせいで土が流されて、あまり植物が育たないんだそうだ。それでも砂漠ってほどじゃないから、まだましだけどな」
「砂漠ってずっと砂地が続いていて水がないんでしょう?どんなところなんだろう」
「それは厳しいところだそうだぞ。昼は暑くて夜は寒くて。東世界ではずっと南にしかないから今回の旅で行くことはないだろうけど」
「ふうん」
「まあ、荒野も森と違って獣が取りにくいし、旅をしづらい場所ではあるけどな」
「森ではタツが毎日弓で狩りをしてくれたもんねぇ」
ほんの数日前のことなのに、ユリがなつかしむように頷いた。
「それに荒野は、魔物が出やすい場所だからな。気をつけないと」
タクの言葉にユリの表情におびえの色が混じった。
「ユリ、大丈夫だから。俺たちがちゃんと退治してやる。しっかり隠れてれば大丈夫だ。ユリには俺がまるごとシールドかけとくからさ」
「うん」
タツが慌てて慰め、タクをにらむ。タクは肩をすくめた。
森では他の旅人とすれ違うことも時々はあったが、荒野に入るとほとんどそれもなかった。広いので同じ道を行くということがあまりないのだろう。コンパスだけを頼りに進むしかない。砂ぼこりの中、歩みがはかばかしくないまま丸一日が過ぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます