第70話
「まあ、しかたないさ。本人が嫌だっていうんだったら」
タツが取りなすようにユリの肩に手を置いた。
「でも…」
「縁があったらまた会うって。だって同じ目的なんだからさ」
「そうだね」
ユリも諦めて頷く。
「さて、これからの旅は荒野が続くから食料とかの旅じたくもちゃんとしていかないとな」
「どこに向かうつもりなんだ?タツ」
「まずはシルア。今日街で会った行商人の人から、魔の力に関する噂が絶えない国なんだって聞いたんだ。やっぱりダリアとロンデルトの中間部が科学では説明できないものが生き残りやすいみたいなんだ。シルアの北にある川の向こうには、魔界につながっている場所まであるっていう噂だったからな」
「へえー。でも今時それはないだろ?昔は魔界だらけだったけどさ」
「さあ、噂だからな。でもあっち方面がくさいことは確かなんだ」
「そうか、それじゃ、もうすぐ出発か?」
「今回はしっかり買い込んでおいた方がいいから、明日は旅じたくに一日かかるだろ。まだそれでも滞在三日だから、もっとのんびりしていきたかったら滞在してもいいけど。どうする?」
「先に進もうか。一か所にずっといても情報は集まりにくいでしょう」
言ったのはユリだった。タツとタクの二人だけだったら、当然先に進むはずだった。二人が自分に気を使って滞在を伸ばしていることに、ユリは気がついていたのだ。
「もう少し休んでいかなくて、身体は大丈夫か?次の町までは一週間近くかかるけど」
案の定、タツは心配そうに尋ねた。
「うん、大丈夫。今日は一日出歩かないでしっかり休んだから」
「そうか」
ユリが力強く頷くとタツは表情を緩めたが、タクは少々疑わしそうな顔をしていた。だがユリに睨まれて何も言わず肩をすくめる。
「明日は買い物だけだから、俺たちに任せておいてユリはもうちょっと宿で休んどけ。ああ、せっかくだし最後にもう一回風呂入っていくか」
タツの言葉にユリの顔が少し引きつる。それでも反対はしなかった。
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