第68話

「そういや、今日の夕方は小さいけどお祭りがあるのよ。踊りの行列が出て街を練り歩くの。よかったら見てきたら?」

 仲良くなった厨房のおばさんが教えてくれたので、戻ってきたタツも一緒に向かうことにした。


「へえ、すごいもんだな」

「ほんと、おもしろいのね」

 何十人もの街の人が大通りを踊りながら練り歩く姿はなかなかの見応えがあった。素朴だが楽しい。

 屋台もいくつも出ており、沿道に腰を下ろして食べることができるようになっていた。

「どれ、あの麵でも食うか?」

 タツの提案で屋台に近寄っていくと、三人は目をむいてそれぞれに叫んだ。

「あなたは!」

「お前昨日の!」

「リュウじいなんでこんなところにいるんだ!」

 

 そこには昨日財布を盗んだ女性と、リュウが並んで麵をすすっていた。

「よう、久しぶりだな。無事にユリと合流できたのか?よかったな」

 のんびりと手を上げるリュウを目にして、タクらは開いた口がふさがらない。

「おー、ユリちゃん。あのちびっ子が随分と大きくなったもんだね」

「え…もしかして、行商のおじちゃんですか?あの時隣町まで背負ってくれた…」

「そうそう。そのおじちゃんだよ。元気そうだね」

「はい、おかげさまで。その節はありがとうございました」

「っていうかさ、リュウじい、なんでその女と一緒にいるんだよ」

 タクが声を荒げると、リュウはきょとんとした。

「なんだ、知り合いなのか?お前ら」

「そんなんじゃないけどさ、そいつ昨日ユリの財布を盗んだんだよ。その上そいつを捕まえようとしたら、仲間の男にユリが首絞められた」

「ああ?あ、お前たちのことだったのか?ほらよ、これ、昨日の金だ。わしが取り返してやったから」

 ポンとリュウは紙幣を放った。

「ああ?どうなってるんだ?」

 タクたちにはさっぱり訳がわからない。

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