第67話

よい知らせもあった。最初に送ったタウベが帰ってきたのだ。

「うわ、なんかぎっしり荷物つめこんである」

 行きに比べてヨロヨロしながら宿屋に到着したタウベの足には、鳥が運ぶにしては大きな箱がしっかりと結びつけられていた。

「ごくろうさま」

 ユリはタウベに餌をやり、鳥かごで休ませてやった。

「補充用の薬と…あー、この薬液は重いわ。あ、高カロリークッキーまで入ってる。携帯に便利だから助かるんだよね」

 ぶつぶつ言いながら中身を確認し、添付されていた一覧表と突き合わせている。中にはアリスかららしい長い手紙も入っていたようで、読むユリの顔に笑みが浮かんでいた。


「ふふ。ああ、そろそろ次のタウベも飛ばさないとね。一週間って速いのねぇ」

「今回は移動で五日半もかかっちゃったからな。アリスさんはなんて?」

「んー?いつものお説教がほとんどだけど。あとアスクラピアの様子と」

 ユリが苦笑いする。

「なんだ、いつも説教されていたのか」

「アリスが心配性過ぎるのよ。私にはおばば様以上に厳しいからね」

「そしたら、今回熱出したの書いたらまた心配するんじゃないか?」

「んーだから気が重いんだよねぇ…一回倒れちゃったし…。でも書かないと補充の薬もらえないしねぇ…」

 大きくため息をつくユリに、タクが目くじらを立てる。

「お前、倒れたっていつだ?聞いてないぞ?」

「あー…」

 口を滑らせたユリが気まずい顔になる。

「なんでもないの、ちょっとのぼせてくらっときただけだから」

「もしかしてそれか?滑って転んだっていうやつは」

「はは、まあね」

「ったく、お前なぁ、そりゃアリスさんじゃなくても心配するわ。慎重そうに見えて案外危なっかしいんだから」

 タクに思いっきり呆れられてユリは膨れた。

「だって…お風呂があんなにのぼせるものだなんて知らなかったんだもの。アスクラピアじゃシャワーばっかりだったし、里には温泉なんかなかったし…」

「まあそりゃしかたないけど…ちゃんと言えよなぁ、そういうことは」

 こつんとユリの頭を小突いてタクはため息をついた。

「はぁい」

 むくれて返事をするその顔が、小さい頃の表情とそっくりだったので、タクは思わず噴き出した。

「なあに?突然」

「いや、なんでもない」

「変なの」

 平和な午後だった。

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