第66話

「まあ、とりあえずあれだけの金を盗られただけで済んでまだよかったよ。あのままユリを連れ去られてもおかしくないくらいだったんだ」

 タツがとりなした。

「まあな」

「元はといえば、私がお風呂で倒れてなかったら盗まれなかったのかもしれないし」

「いや、それは盗む方が悪いって」

 タツはメイをかばいたがるユリを軽くたしなめながらもユリを元気づけた。

「ま、旅ってのはいろんなことがあるもんだしな。散々な晩ではあったけど、あんまり気にするな。でも気をつけろ」

「何言ってんだお前」

 タクが混ぜ返すと、ようやくユリの顔にも笑顔が浮かんだ。


 その後一晩ゆっくり休んだことで、翌日には皆随分と元気を回復していた。タツは街に出てアスクラピアで仕入れた品物の一部を売りに行き、ユリは厨房を借りて薬草を煎じたり乾かしたりといった処理をしていた。ユリを一人にしてはどうも危なっかしいという判断がタツら二人の間で暗黙のうちに下されたため、タクは一緒に残って手伝いをしていた。

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