第五章 ユーピン
第58話
それからは雨に降られることも魔物に襲われることもなく無事にユーピンについた。ロンデルトに比べると圧倒的に小国なこの国は、入国手続きも簡単ですぐに中に入ることができた。
早速馬を預けて散策に出る。
「ユーピンはさ、珍しく旅人が多い国なんだ。ロンデルトに行くにも出るにも通り道になるし、温泉もあって疲れが取れるから皆好んで立ち寄るんだよ。それでこの国の経済が豊かにもなっているから、旅人には親切な国だよ。情報も集まるし」
「温泉って私、入ったことないな」
「気持ちいいぞ、疲れも取れるし」
少し不安そうにしているユリに、タクが笑った。
「みんなでお風呂に入るってことだよね?」
「まあ、そういうことだな」
「みんな裸になって?」
「そりゃそうだ。…あ、男女は別だぞ」
「なあんだ、そっか」
途端にユリは顔を緩めた。
「なんだ、ユリ、男女一緒だと思ってたのか?」
タクが呆れると、ユリは頬を膨らませた。
「だって、知らなかったんだから仕方ないじゃない。アスクラピアはシャワー文化だからお湯につかるってこと自体あんまりないのよ。アリスはお父さんと入ったって言ってたからてっきり…」
「あーそりゃ、ちびの頃の話だろ。小さい子はどっちに入ってもいいからさ」
「そういうことか…」
ユリはほっと息をついた。
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