第57話

翌朝には微熱程度には下がっていたが、タクから話を聞いて仰天したタツは、出発を遅らせた。

「なんだよもう、俺一人知らないで寝てて馬鹿みたいだな。ごめんな、ユリ」

「そんな、熱出した私が悪いんだから」

 ユリは慌てて首を振った。

「なんか、迷惑ばっかりかけちゃって、足手まといだね」

「そんなことないさ。誰もそんなの気にしないぞ」

 タツがわしわしと頭をなでた。

「別に急ぐ旅でもないんだから。もうちょっと寝とけ」

「あーじゃあ俺もちょっと寝ていいかな」

 タクがあくびをして横になったので、ユリもしぶしぶ横たわる。結局、昼食を取ってから三人は出発することにした。


「あ、そうだユリ、この中になんか薬草あるか?」

 二人が寝ている間に野草を集めに行っていたタツが、様々な種類の草を籠の中に並べていた。

「タツ兄、もしかして集めてきてくれたの?ありがとう!あ、これは使えるわ!」

 ユリの眼が輝いた。

「よかった、役に立つのあって。ユリは薬草の研究もしてるって言っていたからさ」

「そうなの。アスクラピアじゃ今は合成薬の研究の方が盛んなんだけど、やっぱり薬草研究も欠かせないものだから。旅の間に手に入るものでもあるしね」

「そういや、ユリは里にいた頃から薬師のばあさんと仲が良かったもんなあ」

「うん、このあたりの植生は里とは違うから薬草の種類も違うけど、処理の方法とかはあの頃教えてもらったことがすごく参考になってるんだよ」

 嬉々としてユリは薬草と雑草をより分けている。タツらは感心しながら自分たちの料理に精を出した。


 ユリが早速作った薬草茶は、においも味もひどいものだったが、不思議と元気が出るものではあった。栄養価が高いことは確からしい。

 顔をしかめながらもどことなく元気になって、三人は出発した。

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