第54話
「ふう」
「片付いたようだな」
タツとタクは安堵の息をついて、武器を納める。いつのまにか、二人の武器はただの短剣と短い鉄の棒になっていた。
「大丈夫か、ユリ?」
タツが振り返ると、ユリはタツに先ほど伏せさせられた格好のまま、あんぐりと口を開けていた。
「大丈夫…」
呆けたように答えてから、ユリは初めて気がついたというように身体を起こした。
「何…?今の…」
「魔物だよ、森の魔物。たまに出るんだ、こういう森とか荒野に。普通昼間はあまり出てこないんだけど、雨で暗いからかな」
こともなげにタツが答えた。
「いつも…こんなのが出ていたの?旅の間には…」
「まあ、時にもよるけどな。出るときはすごい出る。辺鄙な場所ほど出るな」
「怖かったろ」
タクがスッと近寄って頭をなでると、ユリは青ざめた顔で頷き、タクにしがみついた。
「ユリは魔物を見るのはじめてか。それなら、怖いよな」
タツがしみじみとため息をついた。
「大丈夫だ、ユリ。魔物が出ても俺たちが退治してやるから」
タクがゆっくりと背中をなでてやると、ユリは何度も頷いた。
「ありがと、タク、タツ兄…守ってくれて」
「ばーか、当然だろ?」
タクがにやりと笑う。
「俺たち、これしか能がないからさ」
「お前と一緒にするな」
タツも笑う。それを見て、ユリの顔にもようやく笑みが浮かんだ。
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