第53話

そこにいたのは、大きなイノシシのような魔物だった。長いしっぽのようなものが周りの木をなぎ払い、タクのところに飛んでくる。

タツが何事かをつぶやいてから気合を発した。辺りにバリアのような膜が広がるのをユリは見た。そのバリアは飛んできた木を防いだ。


「よーし、タツ、援護を頼むぞ」

 タクが不敵に笑った。剣の先から何かが出た、気がした。呆気にとられているユリの眼の前で、光の球のようなものが魔物に当たり、苦悶の声を上げた。

「ガアッ」

 しかし魔物は倒れず、怒りの声を上げてしっぽでさらに木を飛ばしてきた。それをタツのバリアが防ぐ。さらに怒った魔物はタクの方へ突進してきた。タクが剣を構える。決して長くはないはずのその剣が、光を帯びて伸びた。

 気合一拍。正面から向き合ったタクの体が一瞬、はねたように見え、暗闇を光が切り裂いた。

「グオオー!」

 魔物が断末魔の声を上げ、地響きを立てて倒れ、動かなくなった。

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