第52話
概ね順調に三日間が過ぎ、三人は森の中に入っていた。このままなら少し早めに着けるかもしれないと思い始めていたが、四日目は雨だった。
「ついに降られたな」
森の木々が遮ってくれるのを幸いに、小雨のうちはレインコートを着て進んでいたが、あまりに激しくなってきたために大木の下で雨宿りをすることにし、顔にかかった雨をぬぐいながらタクが悔しげな声を漏らした。
「今までが天気に恵まれすぎてたんだよ。それにしても雨降るとまだ肌寒いな。大丈夫か?ユリ」
「うん、平気」
ユリも濡れた顔をぬぐいながら答える。タウベがかごの中でバタバタと羽根を鳴らして雨をはじいた。
「昼間なのに、雨が降ると暗いのね」
ユリは空を見上げた。うっそうとした森の中は、日中でも夕方のような暗さだった。時折、雷光が空を照らす。
「しかたない、少しここで休んでいこう」
タツの声で、三人は腰を下ろした。雨はなかなか弱まらない。
「…ねえ、なんか、変な音がしない?ゴオーって」
最初に気がついたのはユリだった。
「…ほんとだ」
タツの表情がスッと険しくなった。タクが腰の短剣に手を伸ばす。
「ユリ、ここから動くなよ」
タクが剣を抜き、そろそろと前に出た。
「…!」
ガツンという音と共に出し抜けに飛んできた大きな石を、タクがかろうじてかわした。
「何…!」
おびえた声を上げたユリを、タツが素早く大木の陰に伏せさせる。
「魔物だ。ここから絶対に動くな」
低い声でユリを制して、タツも前へ出た。いつのまにか長い槍と弓矢を手にもっていた。
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