第51話
数時間と行かないうちに、舗装されていた道は終わって草原が広がっていた。その日は初めての野宿だった。水場を見つけ、馬に水を飲ませて世話をしてやってから、タツとタクが手慣れた様子でテントを張る。
「へえー、こうやって寝るんだ」
ユリが興味深げにテントに入り、寝袋の上に寝転がった。
「今は割と気温も高いから、しのぎやすいけどな。初めてだとちょっと固く感じるかな」
そう言いながらタツはユリの寝床には毛布を一枚多く敷いた。
「いいよ、なんか里の寝床みたいで懐かしい」
「テントは一個しかないから、俺たちと一緒になっちゃうけど…」
「いつも一人じゃさびしいもの。たまにはいいじゃない。昔は一緒に寝てたんだしさ」
ユリは無邪気に笑った。多少複雑な思いを抱きながらタツとタクはテントを整えた。
完全に山の中で子供時代を過ごし、その後もリュウとの野宿や軍隊の露営生活に慣れているタクと違って、ユリは都会育ちだったが、六歳までの山での生活を懐かしむかのように野宿を楽しんでいた。決して寝心地がいいとは言えない寝床にも文句は言わない。
誤算だったのは、料理がものすごく下手だったことだ。包丁遣いはうまいのに、なぜか味付けがひどすぎる。タクとタツは決死の覚悟で丸のみし、二度とユリに味付けは任せないことを誓った。
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