第四章 旅路

第50話

第三章 旅路

 その二日後、診療所の人たちに惜しまれながら三人はロンデルトを出た。出発前にユリは報告書や自分の簡易検査データを梱包した包みをタウベの一羽に持たせて空に放った。

「すごいな、これでアスクラピアまで飛んでいくのか?」

「うん。アスクラピアで独自に開発と訓練をされていて、外国から来たのは一か所に集まるようになってるの。ちょっとした荷物は運べる馬力があるから、重宝するのよ」

「二羽持たされたのは、交互に出すためか?」

「そう。ロンデルトくらいなら一日で飛べるけど、遠くになったら何日かはかかるから、念のためにね。アリスはそういうとこきっちりしてるから」

「なんだ、手配してくれたのはアリスさんなのか?」

「たぶんね。自分じゃ言わないけど、馬を手配したのもたぶんそう。アリスはなんだかんだで面倒見がいいし、上のおじさんたちに顔がきくから」

「へえ。いい友達じゃないか。ちょっと怖いけど」

 タクが口走ると、ユリが心配そうな顔になる。

「もしかしてあの後また何か言われた?アリスに」

 タツの視線を受けて、タクは慌てて首を振る。

「いや、そうじゃないよ。あの日の迫力がすごかったからさ」

「ならいいんだけど」

「さ、じゃあそろそろ出発するか」

 タツの一声で三人は歩き出した。預けていた馬を受け取り、荷物を積んで乗りこんだ。

「まずは西に行けばいいんだよね?」

「ああ、まずは一番近いユーピンを目指す。ここからだと五日くらいかかるかな。かなり小さい国けど温泉があるぞ。この先はあまり舗装されていない道になるし、危険な場所もあるからユリは俺たちから離れるな」

「うん、わかった」

「万一魔物が出てきた時は俺たちが相手するから、それまで隠れてるんだぞ」

「相手するって、どうやって?」

「心配するな。俺たちはパワーが使えるから」

 タクが明るい笑顔を返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る