第49話
「それにしても、タツ兄とタクは値切るのうまいね?」
さらにいくつかの品物を手に入れ、その買い付けの様子を見ていたユリが感心した。
「そりゃあ、ここに来るまでこれで食ってきたんだもの。多少はうまくなるさ」
タツが苦笑する。
「最初は騙されたりもしたんだよな。ゴミみたいなの売りつけられたりさ」
タクが言うと、タツも渋い顔になった。
「とにかく、高価なものには手を出しちゃ駄目だな。高級品は俺たちに縁がないから見分けがつかない。それよりも民芸品とか、香辛料とか、そういう物の方がよく売れるし、失敗も少ないな」
「へえ。すごいねー、なんか経験積んでるっていう感じ」
ユリが感心すると、とたんに二人は照れた。
「そんなもんじゃないよ、俺たちだってまだ数カ月しかやってないし、全然だよ」
「でもそれでここまで旅してきたんでしょ?私買い物も一人じゃろくにしたことないもん」
ユリが言うと、二人は驚く。
「えっそうなのか?アスクラピアでも?」
「給料はもらえてるんだろ?」
「そうだけど…。だって食事は寮で出るし、服とかも昼間は白衣だから私服もそんなにたくさん持ってないし、買いに行くときはアリスが見立ててくれたから」
「ははあ、箱入り娘なんだな、ある種の」
タツがうなる。
「そもそもアスクラピアって娯楽に乏しいって言うか、質素倹約っていうか、あんまり医療以外のことが栄えてない国だからね。お金の使い道は少ないんだよね」
「うーん、なんていうか…年頃の娘にしちゃなんというか…」
「買い付けの経験とかはなくても普通かもしれないけど…そうかあ、ずっと病院の中で生活してるんだもんなぁ。世間は知らないんだなぁ…」
タツとタクはしみじみと何とも言えない気分をかみしめた。
「大丈夫だ、ユリ。俺たちが買い物の仕方は教えてやる!あと売り方も」
「まあ、ユリなら治療費だけで路銀くらい稼げそうだけどな」
両脇から頭をなでられて、ユリは顔を赤くした。
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