第46話
「あれえ?タク、お前なにやってんだよ、こんなとこで。一人か?ユリは?」
出し抜けに声をかけられた。タツだった。
「なんだタツか」
「なにやってたんだ?」
「いや、ちょっと散歩」
「一人で?」
「ユリは宿で報告書を書くって言ってたからさ。邪魔しても悪いし」
その言葉を聞いてタツが眉をひそめる。
「お前なんかあった?」
「え?」
「お前らしくないぞ、なんか」
「なんでもないよ」
さすがに付き合いが長いだけあって、タツは鋭い。動揺を隠してタクは笑った。
「そっちは?成果あったのか?」
「んー、まあな。まだ不確かではあるけど一応。待ち合わせには早いけど、もう戻るか。あまり一人にしておくのもよくないだろう」
「大丈夫だよ、子どもじゃないんだから」
そういうと、またタツがじっと見てきた。
「なんだよ」
「やっぱり今日お前変だぞ?いつもならユリのそばを離れたがらないくせに」
なんでもないよ、を許さない目だ。タクはため息をついた。
「大したことじゃないんだよ。ちょっと面白くなかっただけさ」
「何が」
「いや、ユリがあまりに有能な医者なもんだからさ。みんなに頼られてて、なんていうか、自分はそれに比べてーみたいな?」
「あほらしい」
タダの一言でタツは切って捨てて見せた。
「お前とユリはそもそもの出来が違うし方向性も違うだろ。何をいまさら比べてるんだ」
「そうだけど」
完全にふてくされたタクだったが、あまりにあっさり言われると腹を立てるのもばかばかしくなってきた。
「いいから、帰るぞ」
さっさとタツは前を歩く。仕方のない風を装いながら、どこかほっとしてタクも従った。
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