第43話
タクが何も言えずにいると、中からユリが出てきた。
「妹さん、肺炎を起こしているようです。抗生剤という薬を点滴したら回復するとは思うのですが」
「点滴?」
「ええ、針で少しずつ薬を血管に入れるものです。注射を時間をかけてやるようなものです」
「わかりました、お願いします」
ユリはテオの顔を見て頷きあうと、病室の中に戻った。カバンの中から瓶のようなものに入った液体を取り出し、カーテンレールに引っかけた金具からつり下げる。そこから出た管のようなものにつけた針を慎重にミサの腕に刺した。
思わず、タクは顔をしかめた。ミサ本人は意識も朦朧としているのかあまり表情は変えない。ユリは手早く針をテープで固定している。その様子をテオが興味深そうに見つめていた。
「これでしばらく様子を見ましょう。点滴が落ち切るまで一時間くらいはかかると思います。その後で針を抜きますから、なるべく動かさないでいてください」
「ありがとうございます」
宿の主人が深々と頭を下げる。
「よろしければ、その間お話をさせていただいてもよろしいですか。他の患者のことでも御相談したいことが。アスクラピアのお話も伺いたいのですが」
テオが申し出ると、ユリも快諾した。
「私もアスクラピアの医療事情を知りたいと思っていたところなのです。各国の医療体制を調べることも旅の目的の一つですから」
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