第38話

「よう、あんちゃん達、また会ったな」

「あれ、あなたは…」

 タツが大きな声をあげた。茶色いモジャモジャの髪の毛と髭が特徴的な男性だった。

「タツ兄、知り合い?」

「うん、旅の途中で一度会ったことのある行商人の人で、品物を買ってくれたことがあるんだ」

「おやあ、ちょっと見ない間に随分きれいなお嬢ちゃんを連れてるじゃないか。若いのに隅に置けないねえ」

 男性はタツをからかってから、ニッと笑ってユリの方に向き直る。

「俺はトムっていうんだ。よろしくな」

「あ、ユリです。はじめまして」

 ユリが丁寧に頭を下げると、トムはユリの顔をまじまじと見た。

「これはまた、華やかな色合いの子だね。銀色の髪というのも変わっているが、瑠璃色の瞳というのもきれいな色だ」

「そうですか?ロンデルトのあたりでは色々な色の髪や瞳の人がいると聞いていたんですが。ロンデルト出身の私の友人も金髪碧眼でしたし」

「そうだな。他の国よりはバラエティに富んでいるのは確かだが、やっぱり銀髪は珍しいよ。金髪の人は案外多いんだけどね。あともう少し薄い青い目の人とか」

「へえ、そうなんですか」

 あまりにもじっと見つめられて、ユリは少し居心地悪そうだ。その様子を見ていたタクが割って入った。

「すみませんトムさん。俺ら、ちょっと人探しをしているんですけど、ロンデルト近辺のそういう情報入る場所ってどこか知りませんか?」

「うーんそうだね、市は情報の宝庫なんだが、雑多すぎるのが玉に傷でなあ。三番街の食堂はよそ者も多く集まるし、人探しには向いているかもしれないな」

「そうですか、ありがとうございます」

「あっ、ただ、三番街は治安は悪い場所もあるから、このお嬢ちゃんを連れて歩く時は気を付けな。市でもそうだが、きれいな女性を襲おうとする悪い奴らもいるから」 

「わかりました、ありがとうございます」

 丁重に礼を述べて三人はトムの店を離れた。タクは先ほどよりもしっかりとユリの手を握っていた。

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