第37話
「さすがだなぁ、他の国の市とは一味も二味も違うや」
タクがうなり声をあげる。
「私、こんなに大きな市って初めて…。アスクラピアの市なんて、目じゃないわ」
ユリも茫然としていた。
「あれ、なんだろうな?何屋なんだろう」
タツが金属でできたものが並んでいる店を見て、首をかしげている。
「あれ、たぶん機械じゃないかしら。布を織る機械か何かだと思う」
ユリの言葉に、タツはしきりに感心した。
「なるほどなあ。さすがロンデルト、産業革命の国だな。着ている物も、なんかちょっと違う気がするもんなぁ」
市の中には、市民も外国人も交じっていた。行商人が集まる交易大国だから他の国よりもよほど外国人は多いはずだが、それでも市民の方が圧倒的に多い。タツらのように簡素な服装の人も多いが、他では見たことのないような派手な服装の人も何人もいた。
「せっかくだから、ユリも服でも買っていくか?」
「んーでも、こんなにたくさん店があっちゃ、かえってどこで何を買ったらいいかわからないかも」
ユリは困ったような顔をしてタツを見た。
「ねえタツ兄?こんなにたくさん人も店もあって、どうやって情報を探すの?」
「うーん、そうだな。市で話を聞こうと思ったんだけど、こんなに店が多くちゃどこに行ったらいいのかよくわからないなあ。あとは大抵こういう町には人が集まる飲み屋みたいなのがあるから、そこに行くのが一番なんだけど…」
タツが困惑の表情を浮かべた時、近くで屋台を開いていた商人が声をかけてきた。
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