第36話

蒸気機関車の出発するところを見物し、三人は大興奮だった。

「すごいねえ、何であんなに速いんだろう!」

 上気した顔でユリはうっとりと繰り返している。

「ほんとだな。…っと、あんまりのんびり見物ばかりもしてられないな。情報集めに市に行ってみるか」

 タツの言葉に、二人も従う。一番大きな市は駅のそばに開かれていた。


「これは…すごい人だな。はぐれないようにしないと」

「ほんと、どこにこんな人がいるんだろう」

 広い市の中でごった返している人の多さに三人は目を丸くした。小柄なユリなどは簡単に埋もれてしまいそうだ。

「ユリ、手を離すなよ。お前が一番埋もれそうだ」

 タクがユリの手を握った。

「もう、子どもじゃないんだから」

 ユリは不平を言いながらも、素直に手を握り返した。

「よし、じゃあまずは一通り、ぶらぶら見てみるか」

 三人は意気揚々と市に乗り込んだ。数えきれないほどの店があり、食べ物から衣服、日用品、高級な装飾品に至るまで、ありとあらゆる品物が売られていた。

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