第35話

整備された街道であることが幸いし、三日目の昼にはロンデルトに入ることができた。ユリも馬に乗ることに慣れてきて、三日目に入る頃にはペースをやや上げることもできるようになってきた。ロンデルトの中心部に入ると、三人は先に安い宿屋を探し、馬を預けてから見物に出た。


「うわー、すごいな」

「ほんと、すごいわ」

「これほんとに、ナトの里と同じ世界に存在してるのかな?」

 ロンデルトに入ると、三人は一様に興奮していた。アスクラピアも文明が進んだ国ではあるが、ロンデルトはそれがさらに進み、なんといっても華やかさがあったのだ。

「あれ見た?機械仕掛けの時計!」

「うん。からくりで動いてるんだよな?あの人形たち」

「それよりあれだよ、蒸気機関車っていうのを見に行こうぜ!馬の何倍も速いんだってよ」

「私も見たい!」

「おいおい、見物目的じゃないんだぞ…でも見たいな!」

 しっかりもののタツまでもがはしゃいでいた。ロンデルトはかなり広く、海の近くにまで広がっている。蒸気機関車は、市街地から海まで、馬なら一週間かかる距離を一日で着くというのだ。それになにより、蒸気を吹き上げて走る蒸気機関車は、市民や観光客のあこがれの的だった。

「なあ、駅っていうのに行ってみようぜ。そこでなら見られるだろう」

 タクが声をはずませる。

「そうだな。どうせなら乗ってみたいけど、高いからなぁ。俺たちには無理だ」

 タツはそう言って少し残念そうにした。運賃はかなりの高額で貴族階級でないと手が出ないのだ。

「見るだけでもいいよ。行こう!」

 ユリの瞳が輝いている。タツはまぶしそうに眼を細めて頷いた。

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