第33話
「うーん、思ったより疲れやすいみたいだな。随分ペースは落としたつもりだったんだけど」
タクは顔をしかめていた。
「初日だからな。慣れないうちは仕方ないだろう。これまではほとんど病院の中しか動いてないんだし、スポーツもできないんだから体力なくて当然だよ。とりあえず一日無事に過ぎたんだから、上出来だ」
タツは冷静だった。
「まあそうだな、慣れてきたらまた違うだろうし。でもなんかさ、やっぱりユリは俺たちと違うんだなって思って」
「…それは最初からわかっていたことじゃないか。それでも一緒に行こうって決めたのは誰だよ?」
「もちろん後悔なんかしてないし、一緒にいられるのはすごいうれしいよ」
慌ててタクが言うと、タツも表情を緩めた。
「ただでさえ女の子だしな、旅はきついよ。ロンデルトまでは街道だからいいけど、その後はもっとつらい旅になる。それだけ配慮しないといけないってことだな」
「そうだな。荒野は魔物も出るし…ユリはパワー使えるわけじゃないからな」
嬉しさの底で、掻き立てられる不安もある。ユリを連れて旅をできるものなのか、二人はこれまでも散々話し合ってきた。これまでの旅でも危険は山ほどあったし、切り抜けられたのは運もあった。それに何より、二人ともがそれなりに体力と危険と戦うための技を持っていたということがあった。ユリを守りながら旅を続けられるのか。今までの困難さとはかなり違うものになることは確かだった。
なんとなく沈黙が流れて、どちらともなく苦笑いした。
「寝るか」
「そうだな」
この宿にはシャワーはない。絞ったタオルで簡単に身体を拭いて、二人は床についた。
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