第31話

「ところで、まずはどこに行くの?」

「大まかには、どんどん西に行くつもりではいるんだけど、まずはロンデルトで情報収集するのがいいと思うんだ。何と言っても大国だし、近辺の情報はロンデルトの市が一番集まると言うから。それで今は北に向かっている」

「ロンデルトね。近い割に、行ったことはないわ。どのくらいかかるの?」

「今のペースだと二日くらいかなぁ」

「そんなにかかるんだね」

 ユリが目を丸くすると、タクは笑った。

「全部街道でつながっていて安全だし、国と国をまたぐと考えたら近いものだけどな。ユリは旅をしたことはないのか?」

「うん、ナトの里からアスクラピアに来たときだけ。ほとんど国外は出たことなかったの」

「そうか。じゃあ新鮮だろ」

「うん。アリスはロンデルトの出だから、話には聞いたことあったんだけど、産業革命が起きてから、この辺は様変わりしたものね。やっぱり凄いわ、都市国家の外までこんなに建物があるなんてところ、なかなかないわよね」

「そうだな、普通はもっと荒野が広がっているから、これほど整備されているところはロンデルトとアスクラピアの間くらいだろうな。まあ、旅の初心者にはちょうどいいだろ」

「そうね、ありがたくはあるわ。タクたちはロンデルトに行ったことあるの?」

「いや、俺らもロンデルトに入るのは初めてだ。市は早く見てみたいな」

 タクも目を輝かせた。

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