第三章 ロンデルト

第30話

ユリがおばば様から出された条件はいくつかあった。

 なるべく宿に泊まること。危険なことには首をつっこまないこと。激しい運動は避けること。体調管理には十分気をつけ、休養も十分に取ること。体調が少しでも悪かったら休むこと。血圧・脈拍測定は毎日行い、データはタウベに持たせて近況報告書と共にアスクラピアに送ること。等々。


「つまりは、無茶するなってことだな」

 リストを見て、タツがうなる。

「もー、過保護なのよね、あそこの人々は。馬を貸してもらえたのはありがたいけど」

出発に当たっては、二羽のタウベのほかに馬が三頭貸し出された。これも徒歩の旅ではユリの体への負担が大きすぎるのではないかという判断が出たからで、少なくともロンデルトまでは乗っていくように、ただし並足で、というお達しが出ていた。

ユリのぼやきにタツは真剣な顔で首を振る。

「いや、大事にされているってことだよ。それを連れ出すんだから、俺たちも責任重大だ。くれぐれも無理はしないで、疲れたり具合悪くなったりしたらすぐに言うんだぞ」

「はいはい、タツ兄の口癖も変わんないね、昔から」

 そう言ってユリが笑った。久々に得た自由な時間に、はしゃいでいるのは隠しきれなかった。白衣の時と違って、動きやすいシャツとズボンを身に付けたユリは年齢より幼く見えるくらいだ。

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