第10話

当初、不意に現れた毛色の違う美しい母子を、善意で見るものは天女ではないかといい、悪意で見る者は悪魔ではないかとささやいた。しかしユリの母は体が弱く、伏せっていることが多かったものの、いたって穏やかに暮らした。そしていつしか、母子は里長の家の家族となっていたのである。

ユリの母が一年前に亡くなってからは、ダイはユリを本当の娘のように扱った。しかしどこかで、いつか手を放さなくてはいけないということも、わかっていたような気がした。それはもしかしたら、天からの預かり物であったからなのかもしれない。今はそう思うしかなかった。


そして、数日後。

ユリが特別奨学患者として選出され、アスクラピアに向けて旅立ったという知らせが、リュウによってもたらされたのであった。

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