第5話・2VS13
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」
ガガガガガガッガッガ!ダダダダダダダダ!
敵を標準器に捉えると奇声と共に25ミリ機銃をヒトラーは敵に向けて撃ち始めた。
流石元兵士である。
横にいる飛龍はというと、涙ぐみながら滅茶苦茶怖がっていた。というか奇声を上げながら人を一方的に撃ち殺している元独裁者が真横にいたらだれでも怖いだろう。
日常で例えれば乗っていたタクシーの運転手が突然奇声を上げながら人を引き始めるようなことだ。まあ、怖がってもなおヒトラーは撃ち続けるのだが。
―――マーガレット・リー・ヒースside
突然不審船から発射された魔法銃と思わしきものは、ヒースの目の前にいた部下を一人穴だらけにして殺した。
「みんな散開して避けて!後ろに回り込んで攻撃するのよ!」
そういった直後、ガガガ!ブシャア!という音を立ててエースであるはずの騎手がまた5人殺される。
運良く回り込めたものは攻撃しようとしたが...その前にぐしゃぐしゃになり、内臓を落としながら海面へと落ちていった。
舞い散る死体の後ろから現れたのは...菅野直が操縦する紫電改である。
「クソ雑魚どもぉ!かかってこいや!」
落ちてゆく4人の死体に向け、菅野は風防を開けて暴言を大声で吐き、ファック・サインをしながら次の目標に機首を向ける。
「なんてマナーの悪いやつなんだ。死者を冒涜するとは...許せん!おまえはこのトム・エップス・リードが倒す!」
そういって火炎放射と火炎弾の発射しかできないワイバーンで20ミリ機関砲を搭載した紫電にリードはヘッド・オンを仕掛けた。そう、これがいけなかったのだ。そのあとは一瞬だった。リードは瞬く間に20ミリ弾でぼろ雑巾同然になり、顔には穴が無数にあいた。
ワイバーンは羽と体をボロボロにされ、飛ぶことができなくなり真っ逆さまに別のワイバーンを巻き込みながら墜ちてゆく。
これがワイヒール飛行騎士部隊の隊長以外の末路であった。
―――菅野side
「ケッ!全員雑魚じゃないか。そもそも火炎放射やらファイヤーボールやらで大方金属製の本機を倒そうとすること自体が間違っている。そうだよな藍」
そういって菅野はA-1に問いかける。藍という名前はAをローマ字よみして「あ」、
1を語呂読みして「い」として、それをつなげてつけた名前だった。
「人のことを「くそ」とか「雑魚」とかいって中指を立てるのはメッ、ですよ。ご主人様。敵の人も心を持ってるんだからもう少し敬意をもってください!」
「あー耳がいてぇ。明日の命も分からない搭乗員に何を言う!ッてな。あはは...ってウォォ!」
下からヒュン!という音と共にA-1の右前方を通り抜けたのはヒール隊長とワイバーンである。部下を原型もわからないほどぐしゃぐしゃにされて皆殺しにされた彼女は怒り狂っていた。4隻と1機を破壊して搭乗員をあぶり殺すことしか頭の中になかった。
「よくもみんなを!これで墜ちろぉぉ!」
叫びながら紫電改の動力部分、すなわちプロペラに攻撃して撃墜しようとした彼女だが...その考えは叶わなかった。
ビィィィィィ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!
上からスツーカの37ミリ対戦車砲弾を三発も受けた彼女の身体とワイバーンは木っ端みじんに砕け散り、血と肉塊を周囲にまき散らしながら落ちていった。
「おお、あぶねぇ。旋回が間に合ってなかった。東部戦線の鷲さんよぉ!感謝させてもらうぜ!」
『これくらいお安い御用だ。しかし空戦で怒り狂うとはとんだ素人だな。空戦は周囲警戒と心の余裕が大切だということもわかっていないのか』
「まったくだ。肯定」
『それでは異世界での初戦闘も完全勝利で終わったことだし、ヒリュウに帰艦するか。帰るぞカンノ中佐!』
「あいよっ!」
なんだかトップガンのテーマ曲が流れてきそうな真っ赤な夕日(文章で表すと短いが既に4時間が経過している)を背に、彼らは飛龍に帰艦していく。
ウォォォォン!ガッ!ダッ!シュー―!
アレスティング・ワイヤーにフックを引っかけ、着艦した二機はタキシングに移行し、エレベータに載って格納庫へと降りて行った。
―――神聖アストラリア魔法帝国side
「なに!ワイヒール飛行騎士部隊が全滅だと!」
王が声を荒げて軍大臣に問うと、大臣はこう答えた。
「最後の魔法通信によれば、敵は小型艦2隻、大型艦が2席隻で、それらのすべてが見たこともない魔法銃を装備し、大型艦のうち一つは甲板がまな板のようだったということです。」
「敵のワイバーンの特徴はどんなものなのだ」
「ハイ、敵のワイバーンは風車を使って進んでおり、強力な魔法銃と恐ろしい旋回能力を持っていたそうです」
「なんだと!そんなものを野蛮人どもは持っているのか!勿体ない。私たちが使った方が絶対にワイバーンたちも喜ぶだろう」
「では...」
「野蛮人どもの船とワイバーンを奪取せよ!全勢力を投入するのだ!」
「了解いたしました!」
王の命令によって軍上層部は大急ぎで準備を始めた。
最終的に集まったのは戦列艦3隻が率いる94隻の大艦隊、9万人の兵士、400のワイバーン、20の大魔獣だった。
「神聖アストラリア魔法帝国万歳!チールズ一世王ばんざーい!」
軍団は王が載っている御輿を守りながら艦隊に乗り込んでゆく。全員が勝てると思い、恩給をもらって家族と会うことを既に思い描いていた。しかし、ナチスと大日本帝国には勝てないのだ。この世界の全てをもってしてでも...
―――天界side
「...私は彼らを見くびっていたようだ。まさかしょっぱなから神聖アストラリア魔法帝国の最強ワイバーン部隊を殲滅するとは」
「彼らならやれると思っていました。これならあの世界を託しても大丈夫そうです」
「ああ、そうだな。それとあのチョビ髭もなかなかの腕じゃった。神の加護も何もつけていないからすぐ死ぬと思ったが」
「やはり彼ら...第46次地球戦争(WW2のこと。天界ではこう呼ばれている)の力は半端ないものです。これなら我々の目的もすぐに達成することができるでしょう」
そんな会話をしながら女神と主神は地上を見ていた。果たして彼らの目的とは何なのだろうか。
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これが俗に言う「跪け!命乞いをしろ!」というやつですな。恐ろしい。
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↑アドルフ・ヒトラーのラヂオシリーズその壱
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