第26話「交通安全」
「…海人さんカラーコーンって」
「タスクくん、なぜ」
「あの、カラーコーンですか。あの、事故多発の」
「なんで知っているんだい?」
「智早さんから」
「…なるほどね」
海人さんはそのまま外でカラーコーンを見つめていると、目を丸くして焦り出す。
「…目が合った、閉めろ。カオリくん、あらゆる戸を」
「止めないんですか?」
「死にたいのか?」
「…そういうわけじゃ」
「犠牲を考えろ、青二才。」
海人さんは俺らを置いて奥に引っ込んでいった。
…俺らは、どうすれば。
このまま動かなければ、カラーコーンの思うつぼだ。
俺らだけじゃない、俺らよりも多い被害を出すだろう。
すると、香織さんが俺の肩をとんとんと叩いて、PDAを見せた。
[海人さんからよく聞かされるのですが、海人さんのポリシーは『幸せに犠牲は付き物』です。]
…幸せに犠牲は付き物、か。
[恐らく、経験からこのポリシーになったと思っていますが、]
香織さんはその文を消して、急いでまた書き出す。
[海人さんは、たくさんの犠牲をだして、たくさん辛い思いをしたということです。]
それをみた怜が、1歩前に出る。
「だとしても、このままたくさんの被害を出すのは違うよね。僕らがとめないともっと犠牲が出るんだよ。」
[それは]
香織さんはなんども書いては消してを繰り返し、そのまま諦めてしまった。
すると、俺らのすぐ側の窓が割れた。
大きな、パリーンという音を立てて割れた。
俺らは咄嗟に身を守るように構えた、が。
どこからともなく、声がする。
「悪い子たち、悪い子たちですねぇ。悪し悪し。」
「な、なに…!!」
「カラーコーンか?!気づかれてんのか?!」
「アナタたちは異端者と受け取りました。排除対象。全てはルシファー様の言う通り。」
「異端者、ルシファー…!?」
ルシファーって…傲慢の悪魔…だったか?
それにしても異端者とはどういうことだ?俺ら能力者を指しているようだ。
俺たちは…俺たちは、社会にいては行けない存在、ということ…?
すると、さっきまで奥にいたはずの海人さんが、いつの間にか銃を構えていた。
銃口はカラーコーンの頭を狙っている。
「聖書か?生憎といたことはないがね。キミも異端者だということはわかる。」
そういうと、海人さんは発砲をする。
銃弾はカラーコーンに当たる。が、被っていたカラーコーンが吹っ飛び、顔が顕になった。
…いや、顕には…なっていない。
「ひっ…!」
頭が、ない。
首から上がない。首からは黒いモヤが出てきている。
「ちっ、化け物が。」
「…義務教育の敗北です。」
首のない、カラーコーンと呼ばれていた怪物は、そう一言言うと持っていた指示棒を振りかざすと俺らの周りが歪む。
『コインロッカー』
気づけば俺たちは、何も無い白い空間に飛ばされていた。
怪物の、異能力か?一体何者なんだ?目的はなんだ?俺たちが何をしたと言うんだ?
「…なるほど、事故の原因は…これか。」
「え?」
「事故が起きていると何度も話されていただろう。被害者は全員、口を揃えて白い空間に飛ばされたという。あの化け物が罪人だということはハッキリした。ボクたちを殺す為の化け物だともハッキリした。あとは化け物を殺すのみだ。」
海人さんは言い切ると、難しい顔をしてまた口を開いた。
「…化け物の殺し方は、分からんがね。」
…俺らは、なにか役に立てるのか?
なにか、手助け出来れば………
「誰かが能力で作り出したとかは?」
「…頭がいいね、タスクくん。しかし、それだとおかしい。こうも、能力が強力でハッキリしているわけがない。つまりは、あいつは存在している、命があるモノだ。」
違和感を感じ、横を見ると夜子が俺の袖を強く握っている。
酷く脅えている様子だ。
「…」
…俺には守るべき人がいる。まだ想いをしっかりと、夜子に正面から伝えていない。俺は、夜子を守らなければならない。
[大丈夫ですか?]
香織さんが、そうPDAを夜子に見せる。
夜子は作ったような笑顔で、大丈夫だよと一言答える。
その声は酷く震えていたため、彼女の恐怖が受け取れる。
「…夜子」
「…ん」
「未来視」
「えっ?」
「この先、何が起こるかくらい分かれば、俺らはまあまあ有利にはなるはずだよ。」
「…うん」
「怖いだろうけど…、…俺がいるから。」
「…!、うんっ」
俺が元気付けると、夜子は顔が明るくなる。
そして、眼を光らせた。
「『未来視』っ…!」
「…右」
「はっ…、何言ってんだ桜田ッ」
黒い槍のようなものが爆音を奏でながら甘楽に目掛けて飛ぶ。
甘楽はそれを危機一髪で避け、一命を取り留める。
「っぶねーッ!!」
「大丈夫か甘楽?!」
「大丈夫じゃなかったら今頃喋ってねーよ!」
…甘楽の運動神経がなけりゃ、今頃…。
やめろ、そんなこと考えるな。
それはそうと、確かに夜子が言った通り、右から攻撃が飛んできた。
それを見た海人さんは口を開く。
「攻撃の音が大きい…とな。…もしや、認知か?空間の干渉か。つまり…」
海人さんはメガネをクイッとあげると、
「『コインロッカー』を生きた墓と仮定しよう。」
「生きた墓?」
夜子はその言葉に首を傾げる。
「天国、いや、死後の世界と言った方がいいだろう。この空間は夢そのもの、死後の世界そのものだ。そして、認知空間というものでもある。」
「認知空間」
…認知空間…か。
ゲームの話で聞いたことがある。
「じゃあ、俺らが認知をすれば、それは」
「…勘がいいね、侑くん。その通り。例えばこの拳銃は、最高火力の出る最強の銃だと、みなで認知出来れば、これはその通りになる。それが認知空間。」
「でもそれって」
「…浪漫主義者なら無理ない話だろう。しかし、思春期の君たちでは難しい。」
「…」
…難しい、か。無力なものだ。学生というのは。
すると、空間に化け物の声が響き出す。
「あなたたちは異端者、義務教育敗北の端くれ、排除対象。あなたたちの抵抗、全てが無駄です。無駄となるのです。」
化け物は完全にやる気のようだ。止めることは出来ない。
なぜ、こんなことになるのか検討もつかないが、どうやらやるしかなさそうだ。
「やってみろよバーカッ!!!!」
全員が構えると、甘楽は挑発をする。
それを聞いた化け物は嫌な声で返す。
「躾が、足りませんねぇ。」
ああ、最悪だ。この世の中は。
___________________
「なんで、またノイズが。」
キーボードをまた叩く。
何度も、何度も文字を羅列する。
「…直らない。ココ最近調子悪いなぁ。」
智早は、顎に手を当て目を細めるとなにかに気づく。
「…機器自体が壊れてるんじゃなくて、誰かが通信障害をわざと起こしてるんじゃ。」
智早はまたキーボードを叩く。
「…どこもおかしくない。壊れているようなコードはない。…じゃあ。」
マウスをクリクックすると、智早は核心をついた顔をした。
「誰かが意図的に起こした通信障害…か。それも、異能力だ。誰かが邪魔をしている。」
智早は、目を細める。
「悪魔祓いの。」
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