第25話「能力とは」

「ねー、かんてぃーにぃ」

「どうした。グッズは自分の小遣いで買え。」

「そんな話じゃないもん!!」


普通の人々が、休日に出かけるのが非日常を求めてのことなら、普段が非日常の者達は、休日はどうするのだろう。


「かんらにゃーおかしくない?確かに能力を持ってドドーーーンって普通の人じゃなくなったけどさー、最近おかしいよ。」

「おかしい、か。それはどういう?」


甘汰は甘奈の言葉に、手に取っていた名も知らないキャラクターのアクスタを棚に置いた。


「えー?あのね…、遊園地に行く前の数日とか、それよりも前の日とか、どこか上の空なんだもん。今日とか、何も言わずに出ていっちゃったしー。秘密事はお姉ちゃんには丸わかりですよーっと、あー!!!このビジュのアルファ様かっこいー!!!!かっちゃおー♪」

「…甘楽、お前が何をしようと勝手だが…自分を危険に陥れるようなことはするなよ。兄姉に心配をかけるようなこと…」

「かんたくん♪」

「……買わな」

「買って♪予算オーバーしちゃったのー!!」

「だったら何個か戻せばいいだろ!」

「だってこれもこれもビジュがいいし!これは限定グッズだし!!」

「うるせえ!!自分で払え!!」



_彼らに休日は無いのかもしれない。

あるいは、更なる想定外の刺激を欲するのだろうか。




__________



「…やぁ。カオリくんが寝てるから静かにね。」


俺らは、海人さんの研究に付き合うためまた研究所に足を踏み入れた。まだ体育祭の筋肉痛が残る。

言われたのは前に海人さんとあった場所とは違う階だった。

今回はとくに高野さんの付き添いもなかったので、少し俺は緊張をしていた。

空間には大きい謎のカプセルが置いてあり、コードがガチャガチャしていて、どれがどこのコンセントに繋がっているか分からない。


「なにをするんですか?」


海人さんは立ち上がって白衣を着直し、メガネをクイッと上げて


「準備するからそこで待ってて。」


と、海人さんはすぐ近くのソファを指さしてさっさと部屋の奥に向かった。


「どうする、これで脳を抜き取られたら」

「じゃあちはちはとりょーさんは脳を1回いじられてるってこと?!」

「ゲームのやりすぎだ伊澄!!お前は伊澄の影響受けすぎだ桜田!!怖いこと言うな!!」


騒ぐ俺らを宥めるように怜が口を開く。


「なんか、有馬さんって掴みどころがないって言うか、何考えてるか分からないっていうか…そういう怖さだよね…」


その言葉に甘楽は動きを止めて


「伊澄みてぇだな」

「俺掴みどころがないクールな美男子ってこと?」

「ぶん殴るのってありか?」


ごちゃごちゃ言っていると部屋の奥から海人さん顔を出した。


「脳は取り出さない。カプセルの中に入ってもらう」


海人さんはすぐそばのその大きいカプセルを指さした。

奥に行って設定でもしていたのかな。


「こーるどすりーぷ!?」

「君はSFドラマの見すぎだ。研究をなんだと……。」

「これがその?思ってたのと違う」

「カンラくん、僕の研究室で殴る許可を出そう」


海人さんはそう冗談をいうとため息をついて話を続けた。


「その中で能力を発動してもらう。簡単な話だ。それで測定ができる。」


海人さんはそのままカプセルに近づいて最終設定でもするのか、カプセルの裏側をいじり出した。


「簡単に測定が出来るんだ。思ってたのと違ったカプセルのくせに有能だろう?」

「ちょっと根に持ってません?」

「正直ね。」

「すみませんでした」


海人さんはまたメガネをなおして


「じゃあ、誰から測定する?結果はすぐ出る。」

「じゃあやこがやるー!!!」

「わかった、じゃあ中入って。」


夜子はノリノリでカプセルの中に入っていく。


「じゃあ僕の説明通りにやって。僕が合図を出すからその合図で能力を使ってね。注意点だけど喋らないこと。音声を拾っちゃって結果が狂うからね。あとは能力は人に向かって使わないこと。通常時じゃないからカプセルの中じゃ何が起きるか分からない。あとは…君の身に何が起きても自己責任、ね。」


海人さんのあまりにも冷たい表情に、俺はすこし肝が冷える。

それに気づかず、カプセルの中の夜子は元気そうだ。


「じゃあ、ヤコくん。能力使って。」

「はーーい!!」


そういうと夜子の眼があかくなる。


「…桜田の能力って未来視じゃんか」

「うん」

「それつかったら俺らの能力の内容分かるんじゃねぇの」

「それは言わないお約束」

「そろそろ怒ってもいいかな」


海人さんの顔は笑っているようだが…目が笑っていない。怖すぎる。

しばらくするとカプセルからピピッと音が鳴る。


『GET SIGNAL』


『DATA SAVE START』


か、かっけー…

すると、夜子がカプセルの中から出てくる。


「どうだい、ヤコくん。身体に変化はない?」

「なにもないよ!どう?とれた?」

「バッチリだよ。じゃあ、次の人___」


俺らは夜子につづいて次々とデータをとった。

全員採り終わったあと、海人さんはお疲れ様の一言もなく、険しそうな顔でなにかをカプセルから抜きとり、奥に戻って行った。


「なんかこえー…」

「能力のことが少しでもわかるだけで楽だよ。」

「未知の脳裏が自分の体内にあるこの恐怖感…………」

「別にお前はそんなことねぇだろ」

「まぁね」


そうこう話しているうちに、海人さんが数枚ほどの書類のようなものをソファのまえにあったテーブルに置いた。


「君たちの結果だ。どうぞ。持って帰ってもいいよ、家族にはバレないようにね。」

「…どれどれ…」


俺はその書類の中から俺の情報が書いてある紙だけを抜きとり、読んだ。


『REPORT No.005 : TASUKU IZUMI

伊澄 侑 イズミ タスク

現時点 年齢 : 12歳

身長 : 153cm

体重 : 49.6kg

血液型 : AB+

__________』



…?

………

???

…というか、所々おかしくないか?

文字化け…というのか?

…あまり機器の性能が良くないのかな。


書類には、俺がNo.003という人と開花理由が酷似しているということ、

俺の能力は『慧眼』、嘘を見抜く能力で矛盾と嘘を識別するが、あくまで直観的な感知ということ。

相対能力は『嘘をつく能力』だということ。

代償など、エラーがはかれていて、分かりそうにない。


「…海人さん、限界覚醒ってなんですか?このNo.003って?」

「…限界覚醒とは、簡単に言えばもうひとつの能力だね。今の能力より、ずっと効果がつよくて、身体に危険を及ぼす能力。」

「…それを亮平さんが」

「彼は命知らずだからね。人に興味が無い。誰も、どの人も、もちろん自分も。全て等しく、平等に。」


海人さんは亮平さんみたいに下手くそに笑って


「そんな彼が、この能力に興味を持った。面白い人だよ。本当に。」

「…この、No.003ってのは…」

「…誰だったかな。忘れちゃった。No.001は僕。1番初めにやったからね。」

「これやった順番なの?」

「そうだよ。」

「じゃあ、高野さんか有村さんじゃね?No.004が桜田ならよ。」

「…そうか、チハヤくんだよ。No.003は。」

「…反逆、意志…。そうだ、みんなのはどんなの?」


俺はみんなのレポートを一つ一つ見ることにした。



…うーん。うん。俺は4枚も難しい言葉が羅列された書類読んでいるせいで、だんだん頭は痛くなってきたし、ねむくなってきた。

3人も…いや、怜以外の2人も険しい顔をしている。


海人さんは俺らの状態を知ったのか、すぐに話を始めた。


「ありがとね、実験データもとれたし、WinWinだ。………そうだ。少し不可解なことがあってね。」

「不可解なことって?」


海人さんは俺の書類を指さして、


「タスクくんのデータにエラーが起きていた。見たらわかるだろうが、代償の事項やらにエラーが吐かれている。」

「…なんで俺だけ?」

「普通に機器の調子が悪かったと考えても良いが、2人目で急に壊れるなんてことあるのか?それだったら3人目もエラーを吐いているはずだ。が、しかしタスクくんのデータのみエラーが吐かれている。」

「…それって」


突然、俺の言葉を挟むように、すぐ近くで大きな衝突音がした。


「なに?!」

「外かな、君たちはここで待ってて」


海人さんは外を確認しにいく。

俺らも待っててなど聞けず、好奇心で海人さんについて行く。

その途中で香織さんが顔を出した。


「カオリくん、ごめんね。部屋にいて。」

[一体何が]

「外でなにかが起きた。事故かな。とりあえず待ってて。」


海人さんと俺らは、窓から身を乗り出した。

そこには、明らかに俺らが追っていた者の姿があった。


「…カラー、コーン。」

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