第5話「突然の訪問者」
次の日、学校に行くと浅葱先生から部活の審査が通ったと話された。
放課後に部室へ案内され、とりあえずこれからの活動について話そうと思っていた…ころ。
「ライフセービングだけど…、何するんだ?保健委員みたいな?」
「うーーん、そうだな。」
部活を立てると言ったとしても、何をしようか考えていなかったな。
ライフセービング部。人命救助という意味だが……。
「校内パトロールとか?!」
「校内パトロールかぁ、いいね」
「まぁ、ライフセービングつってもそこらへんか」
そう話していると部室の扉が勢いよく開いた。
「ここがライフセービング部?!」
知らない女の人だ……。見たこともないので1年生ではないことは明らかだな。
けれどどうして今日承認されたばっかの部活を知っているんだ?
しかも部活の名前と場所まで………
急な訪問者にフリーズしていると怜が女の人に近づいた。
「何の用ですか?入部希望で?」
「違うわよ!!
「2年の先輩がなんの用で?」
「あんたたち、高野亮平って知ってる?」
…なるほど、だいたい分かった。
亮平さんが光先輩に話したのか。
新しい能力者がいると。
「怜、先輩を中に入れて扉閉めて」
「え?うん…」
積んである椅子をひとつ引っ張って光先輩を座らせた。
「どうして俺らの部活が分かったんです?」
「有村智早って人も知ってるわよね?」
「ああ…もう言わなくていいっす、察せるんで……」
「私はこの2人に言われたのよ。新しい能力者がお前の学校にいるって、だから顔を見ておこうと思って。」
『俺は高野さんに情報収集押し付けられただけなんだけど?!』
「ひゃっ?!?!」
光先輩の携帯から急に、聞いたことがある声が聞こえた。
その声にびっくりして光先輩は椅子から転げ落ちてしまった。
『ごめん驚かせたかぁ。怪我してない?あと勝手にハッキングしてごめんね光ちゃん。すぐ機密情報いう光ちゃんのことが放っておけなくて。』
「ちはちはだー!!」
『夜子ちゃん、昨日ぶりだね。あと、ちはちはってなに?』
声の主は智早さんだった。
すごいな、ハッキングまで出来るんだ。
「んも〜!!!!やるなら先に言ってよ!!」
『ごめんねぇ。』
「それ…どうやってるんですか?」
『んー?コード入れてちょちょいのちょいだよ』
「そうですか……」
これが天才の話すことかぁ。何一つ分からない。
まぁわかるように話していないんだろう。
「履歴残らないわよね?!お母さんにバレたらめんどくさいのよ!!」
『残らないって。俺の事舐めてるの?』
光先輩は舐めてないけど…という悩ましい顔をして、携帯を机に置いた。
「まぁ、いいわよ。好きにしなさい。」
『俺今すごく子ども扱いされてる…?』
「ひとつ疑問に思ったんだけど、能力者同士って会わせていいんですか?喧嘩しちゃう場合もあるんじゃ」
『んー、まぁ基本は仲間意識を持つんだ。この人も辛いことあったんだ!って、勝手に共感する。でも一部の人はそれがいいと思ってないみたいでね?大喧嘩したケースもあったよ。限界覚醒までしちゃ…あ。』
限界覚醒?なにそれ。
智早さんは携帯越しに口滑っちゃった……と焦ったように呟いた。
『中学生の君たちには早いし、耐えられないこともあるから気にしないでいいからね?!本当に能力のことなんか忘れて普通に日常をめざしてもらってもいいから!!!どっかのアニメみたいに変なグループまで作って
「あんた、本当に声のボリューム調整下手くそよね。外出ると声量ゴキブリになるじゃない。」
『それは俺が外が苦手なだけであって!!』
「陰キャかしら」
『俺は陰キャじゃない!!!』
そう言い残して電話をぷつりと切ってしまった。
「普通にLENEで電話かけてきたらいいのに。わざわざハッキングなんて面倒なことして…。有村さんは天然なのかしらね。」
「確かに」
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「また大声出しちゃった……」
薄暗い部屋の中で、智早は付けていたイヤホンを外す。
外した途端、一通のメールが彼のパソコンへ届いた。
話がある。
駅の近くの喫茶に来い。
今すぐにだ。
高野 亮平
「…外出たくないよぉ……」
智早は外が嫌いだ。
学生時代に引きこもりだった彼を両親が慰めようとし、外へ買い物に行った際に両親が無差別殺人犯に刺される事件が起きた。
これは智早が高校1年生の時の話だ。
その話を電話で聞き、嫌いな外に飛び出した際に信号もろくに見ずに走っていたため車に轢かれかけたのが彼の能力開花の瞬間だった。
人間まで嫌いにならず、外だけで収まった。
大切な人をなくすのが怖い。
外に干渉しなければ、人に触れることない。大切な人を作る余地もない。
能力、高野亮平。
これらのせいで作らざるおえなくなってしまった。
「駅前の喫茶店…高野さんが来てくれないかなぁ。優しくないなぁ、あの人は。」
そう呟き、携帯と鍵と財布を持って、携帯にイヤホンを付けて、フードを深々と被って大嫌いな外に出た。
「さっきのやつ、ハッキングなんかせず普通に電話すればよかったな……」
そうやって、また意味のないことしちゃったな。とどうでもいい事を考えながら。
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光先輩も「もういいわ」と帰ってったので部活動会議を再開した。
「えーと!どこまで行ったけ?」
「校内パトロール?」
「そう!それー!!」
夜子はどこからか引っ張り出してきた大きい紙に筆箱からだしたマーカーペンを使って何かをかき出した。
その紙に大きく「お困りごとはライフセービング部へ!」と書いた。
「何でも屋はどう?!よろずやみたいな!!」
「好きにすれば」
「ぶちょーなのにつれないなー!!!」
「もう書いたんだったらそれでいいだろ、な?伊澄」
なんだこの銀髪。夜子にいい顔したいのか?
さてはこいつ、夜子のこと好きだな?
「甘楽って夜子のこと好きなの?」
「んなわけねぇだろなんでそうなんだよこの天真爛漫マンとは死んでもゴメンだ」
「かんかん言い過ぎじゃない?!?!」
「まぁ、いいと思うよー、夜子の案は」
怜の言葉を聞いて嬉しくなったのか書いた紙を外に貼り始めた。
「これでいーでしょ!」
「主張つえーな…まぁいいんじゃね?」
部活動内容も決めたので、今日はもう終わりとして帰る準備を始める。
「週なんにする?」
「4」
「ほぼ毎日じゃねえか」
「水曜は部活動しちゃダメだもんね…そうか…週4になるのか………」
「土日入れてないだけありがたいと思って」
「感謝感激雨あられーー!!!」
「部長だから逆らうに逆らえないのな…。」
今日の帰り道、甘楽と怜はずっとしかめっ面だった。
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