第4話「才能と大人」

「大丈夫だったか?お前ら。」


片手に持っていた銃をしまって、俺らに歩み寄った。


「俺は高野たかの 亮平りょうへい、巡査長だ。」


気だるそうに警察手帳を俺らに見せつけた。


「警察…」

「あぁ、そうだ。」


高野と名乗る男性が、夜子にふれる。


「こいつは…、どうした?」

「き、急に苦しみ出して…」

「能力開花に耐えられなかったか」


能力…開花?


「詳しくはあとで話す。とりあえず来い。その子は俺が担ぐ。」


亮平さんは夜子をおぶって俺たちを外へと連れ出した。

亮平さんが運転していたらしき車に乗って、恐らく俺らは警察署へと運ばれて行った。


つくなり、取り調べ室らしきところに入って、亮平さんは話を始めた。


「まず、お前らが誘拐されたのは理由がある。」

「理由?」


理由?誘拐に理由なんて…お金が欲しいくらいじゃ?


「能力開花、だ。」

「さっきも言っていましたけど、なんですか?それ…」

「能力開花。自身が危険にさらされると本能的に起こす魔訶不思議な現象だ。能力開花のサインとしては、頭痛、眼の紅。お前らも眼が紅くなっただろ?」


紅く…なった。確かに紅くなっていた。


「それがサインだ。お前らは…簡単に言えば能力者になった。」

「……ハァ?」

「今からお前らの能力はなんなのか解析する。多分…、彼女は未来視だな。なにか見えたんだろう?」


亮平さんの眼が紅く光る。これが、能力…?


「で、そこの銀髪は人を操るようだな。発動条件が難しいようだ。」

「人を操る?!」


「…で、そこの…お前それは何色だ?まぁいいか、オレンジは変装だな。完璧に人の容姿をコピーできる。」

「え、なんかしょぼい…」

「言うな。能力はお前らの意思と繋がってるんだからな。」


「黒髪は…、嘘を見抜くんだ。相手の目が黄色くなっていたら、それは嘘だ。」

「…じゃああのときの甘楽は大丈夫じゃなかったってこと?」


あのとき、甘楽の目が黄色くなっていたのを覚えている。


「なにがあったかは知らねえけど、そうならそうなんだと思う。」

「じゃあ…高野さんの能力は?」

「俺のは…、情報を暴く。まぁ、嘘とかついてても一発だ。」


亮平さんは近くにあった紙に何かを書いてこちらをゆらりとみた。


「そういえば、お前ら名前は?」

「伊澄 侑です。この子は桜田 夜子…。この銀髪が佐々木 甘楽で、こっちが梶田 怜です。」

「伊澄??」


亮平さんは俺らの名前を聞きながらまた紙に付け加えた。


「了解だ、感謝する。」

「もういいぞ、桜田にはお前らが説明してやれ。」

「はい、あのここはどこですか。」

「お前らの学校のすぐ近くだ。分かるだろ?」


あぁ…そういえば隣にあったな、警察署。


「あぁ、あと…、彼のとこへ行ってくれ。」


そう言って渡されたのは顔写真付きの書類。

書類には名前と住所が書かれている。

名前は…有村ありむら 智早ちはや

顔写真も、名前も、見たことも聞いたこともない人だった。


「この人は……」

「お前らがなんで攫われたか、わかるはずだ。」

「えっ……と、」

「今日じゃなくていいから早めにいけよ。」

「わかりました…」


帰宅。事情を話して、夜子を俺の家に泊まらせた。

夜子の親も俺の親も心配していたらしい。

そりゃあそうだろう。でも、俺は元気だし夜子自体も元気だから大丈夫と話した。


「…ん…?いずいず…?」

「夜子、良かった。起きた。」

「ここ、いずいずの家…?」

「そうだよ。ちょっと待って、夜子の親に電話する。」


俺のお母さんに夜子が起きたとはなし、夜子の親に無事だと説明してもらった。


「…ね、いずいず。あのときね。夜子、みんなが殺されちゃうゆめ…?をみたの」

「…話すよ、夜子。なにがあったか。」


あのとき、能力開花をしていたこと。

夜子は未来視ができるということ。

他のみんなも無事だということ。

警察の高野亮平という人に助けて貰ったということ。

近日に有村智早という人の元に行かなければならないということ。


すべて夜子に話した。

夜子は何も分からない、という顔をしていた。


「明日いこうか、智早っていう人の元に。」

「みんなで行くの?」

「うん、それ以外ないでしょ」


早速みんなに、明日智早という人の元に向かうとLENEした。


ー翌日ー


放課後。俺らは昨日、亮平さんに渡された住所に来ていた。


家の看板は「有村」。間違いないと思う。

緊張しながら、家のチャイムを鳴らす。

家の奥から、焦ったようなドタドタあるく音が聞こえた。


「はい?」


智早?さんは俺らを見て困惑したような顔で


「…い、家間違えたんじゃないかな?どうしたの?」

「有村智早さん?」

「えっ?」


智早さんは、なんで自分の名前を知っているんだ??という顔をして混乱している。

そりゃあそうだろ。俺らは亮平さんの紹介できたんだから。


「えーと、えーと………何か用かな……」

「高野亮平って知ってますか」


智早さんは驚いたような顔をして目を見開いた。


「あの人かぁ………OK、だいたい分かった。入ってきて」


俺らは智早さんに招かれて家へ入った。

智早さんは部屋につくなり、さっそく俺らに聞いた。


「能力開花?」

「多分そうです」

「そうだよねぇ、あの人アポ無しで俺んちに人来させるから嫌なんだよ〜…」


智早さんは開いていたパソコンにイヤホンを挿して、続けた。


「あ、あの人からメール来てる…気づかなかったな…てかさっきじゃん。」


智早さんはメールを一通りみて


「OK…伊澄 侑くん、桜田 夜子ちゃん、佐々木 甘楽くん、梶田 怜くん…だよね?」

「そうです」

「わかった、言わなくてもいいかもだけど俺は有村 智早。情報収集とかが得意かな。」


イヤホンを片方外して、智早さんは続けた。ああ…だからこの人の元に来たのか。

情報収集が得意なら、なんで俺らが誘拐されたのか理由が分かるかもしれない。


「えーとね、早速だけど君たちが誘拐された理由は能力開花をさせたかったからだね。」

「じゃあ僕たちじゃなくても良かったってこと?」

「うーん、まぁそういうこと。説明は受けた?自身が危険にさらされると…本能的に起こすって。」


じゃあ…それを狙って?でもどうして??能力開花させて何をする気で?


「で…まぁそうだよね。なんで能力開花させたかったかだよね。」


「血が欲しいからじゃないかなぁ。」


「血が欲しい??!!なんで?!」

「能力所持者の血を自身に注入すると能力を授かれるんだよね。まぁ、血液型があってないと身体が拒否反応起こしちゃうからダメだけど。」

「だから夜子たちを捕まえたの?」

「でも殺す必要はどこに?」

「監禁罪で捕まっちゃうといけないし?」

「なるほど」


智早さんはまたイヤホンをつけてパソコンを打ち出した。


「そもそも、能力持ちは気づかれちゃいけないんだよね。こういう奴がいるからさ。」

「じゃあ智早さんも持ってるってことですか」

「持ってるよ〜、じゃなきゃこの話しないよ」

「有村さんのはなんですか?」

「ん?俺のは万物を創造する能力ね。基本なんでも作れるけど脳内設計が苦手な俺にとっちゃ嫌な能力なんだけどね」


打ち終わったのか、パソコンを閉じて立ち上がった。


「今、高野さんが犯人と尋問終了っていう文と共に、高野さんと犯人の自撮りみたいなの送ってきたから多分もう大丈夫だよ」

「あの人タフ過ぎないか??」

「だよねえ。甘楽くん、君正しいよ。高野さん今年52だよ?おかしいよねぇ。」


智早さんは呆れたような顔であれで銃もって殴ってるのか……と呟いて


「多分、もう俺にやらせたいことは以上でしょうね。帰りたいなら帰っていいよ」

「その意味だと入り浸ってもいいということ?」

「場合には俺が児ポで捕まるからやめてね〜。」


そう言って部屋をあとにしてどこかへ行ってしまった。おそらくトイレかな。

することもないので部屋を物色しようとした所を怜と銀髪に止められたのでしょうがなくやめてあげた。


「ねー!能力ってどうやって使うの?夜子使いたい!」

「確かに。どうやったら発動出来んだろうな。」

「まぁ、僕たちはたまたま開花?しただけだし使わない方がいいんじゃないかなぁ」


確かに。俺は青春を送りたいのにこんなことになっちゃって。


「集中するんだよ。眼にね。」


智早さんはいつの間にかトイレから帰ってきていた。


「眼?」

「眼。全神経を眼に向けるんだ。意外と体力使うんだけど…言われてる?」

「言われてなーい!」

「そっかぁ。じゃあ聞かないとだねぇ。」


智早さんが携帯を取りだして何かを打ち出したところで、怜が申し訳なさそうに


「あの、もう門限なので帰ってもいいですか?」

「え?あぁ、いいよ?早く帰んないとお母さん心配するでしょ、ほらほら」


追い払うように俺らを玄関へと連れ出す。

まあ、門限だし。部屋荒らしても良かったけど。


「ありがとうごさいました」

「ましたー!!!!」

「うん、じゃあねぇ」


智早さんがドアを閉じようとしたところで俺はこじ開けようとした。


「智早さん何歳ですか」

「早く帰ってねぇ」


それに困惑しながらもドアを閉じようとする智早さんに対抗する。


「智早さん何歳ですか」

「あのさ、侑くん」

「智早さん年齢」

「23!!!はやく帰ってね!!」


聞きたいことが聞けたので手を離すとドアが勢いよく閉まった。


「お前正気かよ……」

「うるさい銀髪」

「テメェふざけんじゃねぇぞ」

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