第2話「新しい友達」

朝、___時。



俺は夜子の家へ、夜子をお迎えに行っていた。


「夜子、迎え来たよ」

「いずいず………………」


ピンポンを鳴らすと眠そうな夜子が出てきた。

そんな夜子の手を引っ張ってもう対象外の通学路指定区域スクールゾーンを歩く


「まだ眠い?」

「眠いよぉ………、ねー…いずいず、歩きながら寝ていー…?」

「危ないよ」


俺は歩きながら肩へ寄りかかってくる夜子を支えた。

俺たちはしばらく歩いて、学校に着き、校門の前で先生と挨拶を交わして教室に入った。

教室には2、3人生徒がいるのみで、シーンとしている。


「夜子、寝てたら?」

「やぁだ…やだ……やこも…探すもん………」

「えー。」


イヤイヤと机でドタバタ暴れる夜子を横目に人の影が後ろに立った。


「お前らのライフセービング部?とかに入らないかっていう話、受けてやってもいいけど」

「…え」


影の正体は…、佐々木甘楽。どうやら気が変わったようだ。

少し照れくさそうにしている甘楽に、甘楽の言葉で眠気が吹っ飛んだ夜子が抱きついた。


「やったー!!かんかん本当に?!」

「おう、あの、入るからさ、あの、離れて、くれないか?、その、女の子と、ハグしたことなんか、なくて、その」


急に抱きつかれた甘楽は顔を真っ赤にしてどうにかして夜子を離そうとオロオロする。

…何してるんだこの人たちは。

こうなった夜子は制御が聞かないので俺は甘楽に話しかけた。


「甘楽、あと一人なんだけど知り合いとかいない?」

「知り合い?特にいねぇけど…」


…やっぱりいないのか。

昨日の時点で何となく考察は立っていた。

甘楽は俺以上に人付き合いが下手で、友達がいないと。

普通、市立なら誰かしら1人は知り合いはいるだろう。

しかし、あのときの教室は甘楽だけ孤立していた。


「じゃあ探すしかないや。甘楽もやるよね?」

「えっ?あぁ…まぁ………」


甘楽はなんとか夜子を離し、パーカーを着直した。


「探すにしてもよ、ライフセービング?なんて意味分かんねぇ言葉聞かされても、みんなに『なんだそれ』って顔されて終わりじゃねえか?」

「それはそうなんだけどさ。俺この計画小学校のときから考えてるし。」

「お前小学校んときからそんな難しい言葉を…」


俺らはもっと部員を集めるために、廊下に出た。

…廊下に出たとてだ。特にやることもないな。

なんか横通った人に話しかけとけばいいでしょ。


「あのー、俺ら部活作るんですけど入らないですか?」

「え、あ、いいです。」

「お前数打ちゃ当たる戦法やめろ…。」

「あのー、俺ら部活つくるんすけど」

「いや、野球部入るんで」

「ぜってー引っかからないから!!その戦法で!!」

「甘楽は引っかかった。」

「ざけんなお前!!!」

「あのー、俺ら部活作るんですけど入ってくれませんか」

「…え?僕?」


俺のクソカス戦法に、ポンパドールと萌え袖で、完全に女子ウケを狙っているだろうというヤツが引っかかった。

あ、これ引っかかることあるんだ。ラッキー。


「…部員集めてるんですか?」

「そうなんですよ今3人しか集まってなくて」

「…ちなみに何部……?」

「ライフセービング部です」

「な、なんですかそれ…」


知らない人に声かけられた上、知らない部活名を言われたらそりゃこの反応するだろう。

この反応が普通だ。


「名前は?」

「1年2組の梶田かじた れん…です。」

「よろしく。俺は伊澄 侑。」


怜は、少し困った顔で口を開いた。


「えっと…もしかして入る前提で話が進みかけてたり…??」

「え?はい。」

「え、はい?!?!?!」


あー、ほぼ甘楽のときの同じリアクションだ。

とてもデジャブを感じる。


「梶田怜だから…れんれん!れんれんね!」

「れんれん!?!?!」

「ごめんごめん、夜子はすぐ人にあだ名をつけるくせがあって。」

「なにそれ!!?!!」


すると、怜は1人で吹き出した。

何がおかしかったのかよく分からなかった俺は甘楽と夜子に助けを求めたが、?という顔をされて終わった。


「君たちほんと面白いね!、じゃ、ライフセービング部入っていいかな!」

「やったー!!!!れんれんありがとー!!!!」

「いいんだな、これで…」


怜はまだ少し笑いながら、


「…でさ、顧問の先生とか誰なの?」

「…顧問の先生…」

「エッ…顧問の先生…」


顧問の…先生…

何も考えていなかった。顧問の先生………。

夜子も焦った顔でこっちみてるし…。

怜も甘楽も「は?」って言う顔してる…。


「…お前らもしかして決めてなかったのか??」


考えが甘かった俺は顧問の先生など考えていなかった。

俺は夜子と顔を合わせて間を置いたあと、意思疎通したかのように頷いた。


どこの部活の顧問もしていなくて…俺と夜子がわかる先生__。


_放課後_


「…部活の顧問をして欲しい?」

「そうです。にしか頼めないんです。」


俺ら2人が思いついたのは 。確か自己紹介でどこの部活の顧問もしていないと話していた気がする。


「うーん…私、家事とかあるし…あんま部活に顔出せないかもだけど…」

「その言い方ってことはしてくれるってことですか?!」

「してもいいけど…」

「無理に顔出さなくてもいいので是非顧問をしてくれませんか?」

「そう?じゃあ…いいかな、書類探してくるね!」


そう言って席を外し、職員室の奥の方へ書類を探しに行った。

案外あっさり承諾してくれたな。うれしい。


「えーと…これね、部活名と…ここに部長と副部長の名前書いて…あ、本人が名前書いてね。佐々木さんも梶田さんも書いて。」


俺は4人で名前を書き、浅葱先生に書類を提出した。

書類が受理されるのは数週間後らしい。

まぁ、今入学シーズンで忙しいのだろう。

こんな忙しい時期なのに、よく受け入れてくれたな。


「受理されるといいね!あ、LENE交換しておく?受理されなくても友達ってことで!」


LENE。いいね。交換しておこう。

甘楽も夜子も携帯をもう出していたので、俺も携帯を出す。

そしてLENEをして、グループチャットを作った。


「よーし!!これで私たちはお友達だねー!」


そういった夜子に、甘楽は笑った。

甘楽として、お友達が嬉しかったんだろうな。

怜も甘楽に釣られて笑った。

入学して2日目くらいで愉快な友達が出来たようだ。


「友達って最高なんだな!」


甘楽は確かにそう言った。

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