第2話

 二人の少年は、体型から身長まで、二卵性双生児と呼ぶには似すぎていたが……一卵性双生児というほどには、似ていない。


 それは彼らが、この老人のクローンだったからである。


 体細胞核移植。


 1996年に誕生したクローン羊ドリーと同じ、体細胞から取った核を、核の取り除かれた卵子に植え付けることでできるクローニング方法である。


 ゆえにこの方法では、卵子の細胞質にわずかに残るDNAも影響を残すため、そこから産まれる子は『一卵性』ほどに似ていないクローンとなるわけである。


「お前たちの……どちらかの脳をくり抜き、私の脳を移植する。これで身体だけは、私は若い身体を得られるわけだ。今日まで15年、そのためだけに、クローンとして培養したお前たちを地下で飼ってきた。そろそろ人生も堪能し終わったところだろう? 役だってもらうぞ、私が未来へ帰るために」


 老人士門は、まるで落とした筆でも拾いに行くかのような、無遠慮ぶえんりょな足取りで、警戒心をむきだす少年へ近寄る。

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