第77話
「きゅっ、給料日後にしてくれると嬉しいです」
冗談でも断らないのかと猿谷の男気に感心しながらも、聞き流して仕事の準備をする。
「さっきの書類、鬼沢さんに確認とって営業に連絡してね」
「えぇ! 鬼沢さんすか……」
あからさまに嫌な顔をするが仕事だということは分かっているようで、嫌だとは口に出さない。
――口に出さないだけ成長したのか?
息を吐いて猿谷の書類に手を伸ばし、ざっと目を通して確認する。
「ほら、大丈夫だから早く行って。遅いほうが怒られるよ」
最後の一押しをして仕切りを指差すと、猿谷はネクタイを整えて書類を手に緊張した面持ちで歩き出す。
鬼のいる鬼ヶ島にでも送り出したようで、猿谷の背を見ながらこっちがハラハラしてしまう。
仕切りの向こう側は見えないが、怒鳴り声も聞こえないことにホッとする。
――早く癒やされたい!
始まったばかりの午後の仕事に溜息を吐き、定時に帰れるようにと気合をいれた。
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