3

第73話

「ねえ、どう思うさっきの白鳥君の話」


「意外だったよね文鳥飼ってるの」


「違う! そっちじゃなくてモテるってほう!」



 昼食後の化粧直しにトイレの鏡の前で、志帆と二人で苦笑いを見合わせて話す。


 猿谷と違って白鳥はプライベートが全然見えないし話さないので確かに驚いた。


 神経質なのは仕事中だけでプライベートでは、猿谷と変わらなかったりして。



「まぁ、顔は悪いほうじゃないしね……年齢的にも彼女がいても変なことはないんじゃない?」


「彼女!? いるの? 変でしょう! 重箱の隅をつつくような指摘をしてくるような男にどんな彼女ができるのよ」



 口紅を塗りなおしていた志帆は鏡から私に向き直り、大袈裟に話す。


 この反応は普段の白鳥を見ていれば納得出来る。犬神に白鳥と猿谷の教育を任命されたと言っても、二人を同時に見るのは難しい。


 デスクが隣合わせの志帆が白鳥の仕事を見ているのだが、最初こそ穏やかに教えていても最後は何故か言い合いになっているのをよく見る。



「そろそろデスクの場所変わろうか?」


「ありがとう。でも、猿谷君に替わったところで大差ないから」



 年齢も近いしそこまで先輩のこだわりはないが、白鳥と猿谷は特殊な後輩だ。


――取り敢えず敬語が使えるし仕事も出来る方だから平気かと思ったんだけどな。


 なんにせよ人に何かを教えると言うのは気苦労が多いのは確かで、白鳥に関してはそこそこ仕事が出来るからなのか口答えが酷い。

 志帆に至ってはこの所の疲れはほぼこれが大半を占めているのは間違いないはず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る