第70話
「スワン君はなにかペット飼ってるの?」
「はい。文鳥を飼ってます。今の子で三代目です」
「白鳥君と動物ってなんか意外だわ」
隣で聞いていた志帆も驚いたように、うどんをすすりながら声を上げる。
――家に帰ったら部屋で放鳥したりしてるのかな?
いつもはこの辺で会話が終わってしまう白鳥だが、箸を止めて白鳥は手の平を見せながら顔を緩めて文鳥の話を続ける。
「呼ぶと飛んできて手の平でそのまま寝ちゃったりするんですよ」
文鳥を手の平で寝かせる白鳥の姿を思い浮かべると和む。
珍しく笑顔を見せながら話す白鳥に、もっとその笑顔をお客や同僚に見せたら人間関係もうまくいくだろうにとも思ってしまう。
苦笑いを返しながら、距離の縮まらない白鳥ともう少し文鳥の話で近づこうと思っていると、犬神と猿谷の方から犬の鳴き声が聞こえる。
「これが走るエリザベート。お転婆なんだよな~」
どうやら写真から動画披露になったようで、志帆と顔を見合わせていいかげん猿谷を助けてやろうと頷く。
このままだと昼休みが終わっても愛犬スイッチの入った犬神は気付かず猿谷に話し続けるだろう。
「そうだ、犬神さん。後でエリザベートの写真を何枚か携帯に送ってくださいよ」
「おっ、猫派の桃屋もエリザベートの魅力に気づいたか!? 圧縮ファイルで送ってやる」
「犬の話ばっかりしてると、ご飯冷めちゃいますよ。ほら、猿谷くんも早く食べないと!」
すかさず志帆も遮るように入って全員が昼食を食べることに戻り、すっかり自分の話も反れて終わったと安堵する。
――が、空気の読めない猿谷がまた蒸し返すように余計なことを話しだす。
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