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第64話

一大イベントともなれば、仕事は通常よりも忙しく今回はコラボ商品ということで連絡や確認作業が倍。


 それに指揮を取っているのが、なにかと細かい鬼沢で忙しさのなかにピリピリとした緊張感があり最近は、昼休みに入る頃にはごっそりと体力、気力ともに奪われている。



「やっと昼休憩!」



 隣の席に座る猿谷がペンを机に投げ出して伸びをしたのを合図に、周りも力が抜けたように手が止まる。



「実、お昼どうする?」


「犬神さんにご馳走してもらう予定」



 斜め前のデスクから顔を覗かせる志帆に自分のパソコンの画面を下げて犬神の方を指差す。


 犬神もちょうど顔を上げてこちらに気付いて、昼飯の約束を思い出した様子で苦笑いを見せた。



「社食でいいか?」


「贅沢は言いませんよ」



 休憩中とはいっても外に出てトラブル対応が遅れると期間が無いので致命的なことになりかねないので、最近は上司の犬神はもっぱら社食なのは知っている。


――まぁ、手伝いってほどのことしてないし。


 書類などをしまって財布を持って立ち上がり、志帆を見ると一緒に社食にすると貴重品を入れた小さなバックを持って立ち上がる。



「俺も一緒に社食行くから待って!」


「スワン君も一緒にどう?」



 猿谷も行くと言い出したので一応、こういった輪に自分から入るのが苦手な白鳥にも声をかけた。


 白鳥は準備を済ませて丁度、机を立ってメガネを上げて応える。



「僕も今日は社食のつもりでしたから別に構いませんよ」


「フンッ。素直に一緒に行きたいって言えよな」



 余計な一言を猿谷がつぶやき、また一色触発しそうな予感に溜息をつく前に犬神が割って入った。

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