第60話

「おはようスワン君!」


「僕の名前は白鳥 清吉[シラトリ セイキチ]です。ふざけた呼び名で呼ばないで下さい」


「相変わらず固いなスワン君は……」


「だまれ猿」



 眼鏡を上げながら注意してくる白鳥も営業部から移動してきた問題児の一人で私の後輩。


 潔癖で神経質な白鳥は、先輩はおろか客にまで容赦なく指摘をするので優秀ではあるが営業部で仕事するには向かないと企画部に流れてきた。


――二人とも個性が強すぎるんだよな。


 犬神に「お前が適任だ!」と言われ二人の教育係を押し付けられた感があったが、二人とも基本的に仕事は出来るし良い子達だ。


――ただ、性格が両極端で仲が悪いのが面倒臭いんだよな。


 言い合う二人に溜息を吐きながらオフィスに向かい歩き出すと、白鳥と猿谷もフンッと顔をお互いに反らしてついてくる。



「おはようございます」



 挨拶をしてオフィスに入ると、既に犬神はパソコンに向かい仕事をしていた。



「おうっ! まだ時間じゃないからお前らは仕事しなくていいぞ」


「急ぎの仕事ですか? お昼おごってくれるなら手伝いますよ」



 引き出しにバックをしまいながら、パソコンに電源を入れて犬神に話すと苦笑いを見せる。


 鬼沢班とを遮る仕切りを指差し、資料で口元を隠しながら犬神が小声で愚痴る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る