第58話


 ペンを止めるとノートから顔を上げて腕を組み脱衣所で追い詰められたことを思い出す。



「あれって発情していたわけじゃないよね?」



 狼男の繁殖期なんて分かる訳がないのだが、相手も狼女なるものがいて番となるのか、狼男同士で繁殖しているなんてことも考えられる。


 後は人間か狼だと予想するが、狼は日本では絶滅したとされているし近しいなら犬と言う可能性もある。


――海外では別の種と交雑したなんてのあるし無いとは言い切れない。


 種の存続とか銀が考えているなら出来る限りは協力してあげたい。


 デリケートな問題をいきなり銀に問う訳にもいかないので、狼から知ろうと本棚にある動物図鑑を引っ張り出して開く。



「狼の繁殖期は……冬季。今頃じゃん?!」



 雄狼は一夫一妻で生涯連れ添うと書かれているが、これが狼男の銀に当てはまるのかは謎だ。


 繁殖期で暴走されて自分の身が別の意味で危険と言うのも困る。ペンを取りもう一度ノートに書き込む。




 フッと息を吐いてノートを閉じ引き出しにしまう。



「明日、会社で色々集めてみよう」



 動物図鑑を本棚にしまうと、笑いながらベッドに寝転んだ。

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