第56話

――まずい気持ちよさなんだよな。


 下半身の方に快感が集まり熱を持ちはじめる。慌てて実のブラッシングを嫌がるように尻尾を振った。



「嫌だった? それじゃ今度はお座りして」



――嫌ではなけど。今はちょっとお座り無理!


 どの姿でも全裸だし状況が悪化することはなんとなく予想がつく。


 尻尾を自分の体にパタパタと当てながら下半身の猛りを静めようとしていると、実はお座りをしない俺に首を傾げる。



「お座り嫌なの? そのままゴロンでもいいよ」



 俺の体を横から押して腹を見ようとする実の頭を尻尾で叩きグゥゥと唸るとパッと手を離して悲しそうな顔を見せた。


――そんな顔されても、腹を見せたら叫ぶと思うぞ。


 優しさだとフンッと鼻を鳴らし背中を見せて猛りを隠すように丸くなる。



「そっか……ブラッシングはまた明日ね。お風呂入ってきます」



 ブラシとシャンプーを片づけるとフラフラと風呂場に入って行く実の姿を片目を開けて見送る。



「この姿だと会話なしで追い払えるんだな……」



 しっかりと風呂場からシャワーの音が聞こえてきたのを確認してから、脱がされた服を集めて人の姿に変わり服を着た。



「ブラッシングは止めそうもないし、対策を考えないとまずいな……」



 まだ少し熱をもつ自分の下半身に苦笑いをして息を吐いた。

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