第55話
――これも仕事の内だと思えばいいか。
服を着たまま姿を変えたので、もぞもぞと服を頭から抜こうとしていると実が飛びついてきた。
「獣人の姿もいいけど、狼も可愛い!」
我慢できないように俺が着ていた服を剥ぎ取り野生そのものになった俺の首に抱きつく。
――人を全裸にさせて恥じらいはないのか?!
放れろとグゥゥと唸り声を出すと首に埋めていた顔を上げて不思議そうに俺を見る。
「狼だと喋れないんだ?」
俺の顔を覗きこみながら聞くが、もう余計なことを話したくないのでフンッと鼻を鳴らして苛立ちを込めて尻尾をパタパタとに打ち付ける。
実はそんな俺の様子など全く気にせずにシャンプーを床に置き、いよいよブラシを握りしめて俺の毛を梳かし始めた。
「気持ちいいですか?」
耳のそばで囁くように聞かれ耳をピクピクと動かすと、実は嬉しそうに耳の後ろ辺りを梳かす。
――ちょっと気持ち良いかも。
ブラッシングなど生まれて初めての体験だ。体をマッサージされているようで、瞼が重くなってくる。
首を伸ばして目を瞑った俺の様子に実は気を良くしたのか、背中も丁寧に梳かす。
「サラサラだけど、やっぱり毛が抜けるね……」
ブラシに付いた毛を取り、またブラッシングを再開したのはいいがお尻から尻尾の辺りに移動されるとムズムズとしてくる。
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