第53話

「ブラッシングまでがプレゼントです……」


「遠慮する!」


「なんでよ?! シャンプーもしてあげるよ?」



 心底残念そうに目を潤ませ、断るなんて信じられないと言った様子で、なおも俺に詰め寄ってくる。


――俺のことを完全にペットだと思ってやがる!


 怒りに怒鳴りつけてやろうと思ったが、それより効果的な分からせ方を思いつく。



「へぇ、シャンプーもしてくれるんだ? それじゃ、お願いしようかな」



 さっと立ち上がり実の両手を掴んで笑顔を見せる。拘束された両手に慌てたような表情をしているのを黒い笑みに変えて実を持ち上げて肩に担ぐ。



「な、なにするの!? 下ろせ! 銀!!」



 手足をバタバタと動かして暴れ出すが、実の抵抗など屁でもない。


――実にこそきちんとした躾が必要だ


 がっちりと脇腹を抑えて風呂場まで連れていき脱衣所で騒ぐ実を下ろす。


 シャンプーとブラシを両手に持ったまま文句を言って脱衣所から出ようとするが当然、入口のドアには俺が立ちはだかっているので逃げ道はない。



「洗ってくれるんだろう?」



 艶っぽく笑って見せながら、上着を脱ぐと実は一歩後ろに下がるが狭い脱衣所は半歩で壁だ。


 獣の性なのかへんな加虐心が沸き起こり、実を壁に追い詰め実のスウェットの上着に手を掛けた。

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