第50話
「ご飯出来てるけど……風呂が先か?」
声を掛けると頬ずりしていた顔を上げて俺の顔をジッと見つめて、はにかんだような笑顔を見せる。
「もっふもふの嫁がいる……」
「何を言ってんだ! いい加減に離れろ! 飯が冷める」
思い出しように獣人から人の姿に変わると、驚くほど素早く実が離れる。
今まで人間に人の姿でこうも毛嫌いされるような態度は取られたことがない。
――どの姿であっても俺は俺で
違う関係ない。別にどんな態度をとられたって気にすること事態が間違っていんだと、苛々しながら自分の頭をガシガシと掻いている姿を実が首を傾げて見ている。
「ご飯もう出来てるんだよね? 着替えて先に食べるよ」
フフッと不気味に笑いスキップしながら実が部屋に戻って行くのを見ながらドアが閉まる音がしたと同時に溜息を吐いて鍋をテーブルに移動させる。
平常心。いつもの俺でいればいいだけじゃないか。食事して体で奉仕する。
――体での奉仕の仕方が違うだけだ!
俺自身の性欲が云々などと言うこともないし、片づけて今日はフカフカの布団で眠るだけ。
女と居てこんなこと一度たりとも無かったのに、最初のスタンガンが知らずトラウマになっていて緊張してしまうのだろうか。
落ち着かない気持ちで食卓につき実が来るのを待つ。
「お待たせ。今日は鍋? いいね~」
「八百屋がすすめてくれた」
スウェット姿に着替えた実は化粧はしているが、とたんに幼く見える。席に座り早速、箸を手に鍋を突こうと目を輝かせている姿はまるで子供だ
その姿が面白くてジッと見ていると鍋から俺に視線が移りハッとしたように箸を置く。
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